Fast Search & Transfer(Fast)主催のカンファレンス「FASTforward 07」が米国にて開催された。カンファレンスの基調講演で、同社幹部は主にホスト役に徹し、著名なスピーカーらがWeb 2.0の世界でいかにサーチが重要な役割を果たしているかをアピールしていた。
その一方で、FastのCTOを務めるBjorn Olstad氏が日本のメディアの取材に応じ、エンタープライズサーチとは何なのか、何が求められているのか、そして同社はどういった方向に進むのかなどを語った。
--YahooやGoogleなどのインターネット検索エンジンが浸透していることから、エンタープライズサーチもこうした検索エンジンをアプライアンス的に導入すればいいのだという考えを持つ企業が多いかと思います。Fastの提供するものは、インターネット検索とどこが違うのでしょうか。
まず、サーチには2パターンあると思うのです。ひとつは、SQLなどのデータベース技術を駆使して検索するパターン、そしてもうひとつは、GoogleやYahooなどのインターネットサーチです。Googleが上場して時価総額も相当な規模になり、注目を浴びたことは業界にとっても大きな意味がありますが、インターネットサーチは基本的に言語が並んでいるだけのサーチで、ユーザー側もそこそこのものが見つかればそれで満足します。一方、エンタープライズサーチは、複雑なデータスキーマにも対応しており、企業で問題が起こった場合に答えを探し出してくるというレベルになっています。企業用途では完全性が求められるのです。
また、インターネットサーチの場合、ユーザーは何を探したいかわかった段階でサーチしますが、何が欲しいのか明確にわからない段階でサーチする場合は違った技術が必要となります。
--エンタープライズサーチで求められる完全性を実現するために、何が必要なのでしょうか。
大量なデータをサーチする際のコスト効率性の高さはもちろんのこと、検索結果が本来のデータの重要性をなるべく忠実に表現できるということ、また、数多くの検索結果の中から、検索した人にとってどのデータに価値があり、どのデータがノイズなのかをシステムが振り分けられること、さらには、統計的なデータから価値を見いだしていくことなどでしょう。
--Fastの技術は、言語の違いなどにどこまで対応しているのですか。特に日本での取り組みに関して教えてください。
日本では2001年からビジネスを始めていますが、日本独自のニーズがあれば、研究開発チームが直接日本で対応します。現在も4〜5名日本には研究開発担当者が常駐していて、顧客の要求事項を聞いた上でソリューションを作っています。その中には言語的なものもありますが、人名や地名、製品名などは、既に抽出機能で対応しています。
顧客の事例として、英語同士ですが、企業合併で数社が統合され、CRMや顧客データベースなどのシステムが統合した際、それぞれのデータモデルが違っていても、データクレンジング技術を使ってデータの共通点を見いだし、統合インデックスを作成したことがあります。
また、日本ではモバイル系の要求もありますが、この分野は日本側が進んでいるため、日本で開発することもあります。
--Fastはサーチを基にしたBIとして「Adaptive Information Warehouse」に力を入れているようですね。ただ、例えばこのデータは既に価値を失っていて、逆にこちらのデータは重要性を増してきたといったように、ドキュメントごとに異なるライフサイクルを追いかけることがFastの技術だけで可能なのでしょうか。
Fastの技術を他社にOEMすることで実現したいと考えています。例えば、Documentumに対するOEMで、コンテンツマネジメントが実現します。
--では、2月5日に発表したばかりの「AdMomentum」は、どういった企業をターゲットとしていて、どのような使われ方をするものなのか教えてください。
GoogleやYahooが広告のプラットフォームを提供し始めたことで、メディア側の広告収入の幅は広がりましたが、GoogleやYahooを通じて収入が入ってくるため、メディアと広告主の距離は遠くなりました。こうした状況を続けていいのか、ということでAdMomentumを発表しました。
AdMomentumによって、GoogleやYahooに頼らなくても、メディア側が広告のターゲティングをより細かく設定できるようになります。中長期的には、こうしたメディアが集まって、広告ネットワークのようなものができていくのではないかと考えています。
--今後の研究開発のメインテーマを教えて下さい。
サーチをより拡張したプラットフォームとし、ユーザーセントリックなサービスを提供したいと思います。パートナーやOEMなどとも協調して進めていきたいですね。また、Web 2.0の世界で、オンライントランザクションからいかにして利益を上げていくのか、そのために役立つソリューションは何なのかといった、ビジネスニーズの高いものを作り上げていきたいと思います。