サービス指向アーキテクチャ(SOA)という言葉が、IT業界で語られるようになってからかなりの期間が経つ。しかし、依然としてこの言葉の意味がよく分からないという人も多いようだ。
実際には、SOAの考え方は極めて単純である。ソフトウェアを「サービス」という部品の集まりとして構築しようというだけのことなのだ。このソフトウェアの部品化という考え方はソフトウェアの歴史と共に常に存在する極めて基本的な考え方だ。サブルーチン、共通ライブラリ、オブジェクト指向プログラミング、分散オブジェクト(コンポーネント)などの考え方である。
では、なぜ、これほど単純な概念であるSOAが世間になかなか認知されないのだろうか。その理由としては第一に、「サービス」という言葉が、ITの世界であまりに多くの意味で使用されていることがあるだろう。人が提供する役務(例:運用サービス)という意味で使われるのは当然として、ソフトウェアの機能をネットワーク経由で提供することにも使われたりする(例:アプリケーション・サービス・プロバイダー、SaaS--Software as a Service)。既に理解できている人は文脈で意味を区別できるので問題ないのだが、初心者にとっては、この多義性が理解の妨げになってしまうのだろう。
もうひとつの問題は、ITベンダーが自社の製品戦略に都合の良いように、SOAやさまざまな付加的情報を語ってしまうため、SOAの本質が見えにくくなっていることもあるだろう。もっとも、このような混乱は、SOAに限らずあらゆるITの流行語について発生している問題でもある。例えば、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)、BPM(ビジネス・プロセス管理)などがSOAと同時に語られることも多い。これらの概念は、もちろんSOAと関連してはいるのだが、SOAそのものではない。
では、今なぜSOAがこれほど重要視されているのだろうか。この問いに答えるためには、「サービス」が「コンポーネント」や「オブジェクト」とはどう違うのかということを考える必要がある。実はここでも、業界には混乱が見られる。「サービス」という言葉の明確な定義が確定しているわけではないからだ。ここでは筆者が考える(ソフトウェア部品としての)「サービス」の定義を紹介する。この定義が唯一無二のものであるとは言わないが、SOAの価値を考える上で重要な定義であると思う。
第一に、サービスとは「複数のアプリケーションをまたがって共用され得るソフトウェア部品である」と言える。オブジェクトや分散オブジェクト(コンポーネント)は、どちらかと言えばひとつのアプリケーションの中で共用されるソフトウェア部品である。これに対してサービスは同一アプリケーション内だけではなく、複数アプリケーション間で共用できるように構築するのが通常だ。
この特性により、サービスは粒度(「りゅうど」と読む。機能の単位のこと)が比較的粗く、独立性が高いソフトウェア部品となることが多い。また、機能的にある程度の汎用性を備えていることも必要だ。限定的な機能しか提供できない部品であれば、特定の呼び出し側プログラムにしか対応できないからである。現実のSOAの応用では、例えば、レガシーシステム上で稼働するアプリケーション全体をひとつのサービスとみなすようなケースも存在する。「部品」というイメージで見るとかなり粒度が粗いと言えるだろう。
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