新野淳一の戦略

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    仮想環境では試せない性能テストも容易に

    仮想化技術の普及で動作テストが容易に

     仮想化技術の普及で仕事が楽になったものの1つが、アプリケーションの動作テスト環境の構築であることは間違いないでしょう。さまざまなOSのバージョンに、さらにパッチのバージョンを組み合わせ、その上クライアント/サーバ型のソフトウェアであれば、さらに複数のデータベースのバージョンを組み合わせたりと、多数の環境を用意するには、物理的なマシンやハードディスクで環境を変えなければならず非常に手間のかかることでした。

     実際にこれまで、さまざまな環境を切り替える効率をあげるために環境ごとにマシンをずらりと並べたり、多数のハードディスクを切り替える装置を導入したり、といったことを見てきました。

     それが、仮想マシンが普及したおかげで、1台のマシンの中で簡単に異なる環境を作り出すことができ、しかも物理的には1台のマシンの中で複数の環境が混在できて、簡単に元に戻すことも可能。仮想マシンは動作テスト時に必須のソフトウェアになっています。

     この利点は、別にテストを担当する部門だけでなく、一般的な企業のIT部門でも重宝しているはずです。例えば、いま業務アプリケーションが動作しているサーバOSにパッチを当てなければならないとき、パッチを当ててもアプリケーションの動作に支障がないか、いちいち実機のサーバをテスト用に用意しなくても、仮想環境で試してみることが容易になりました。

    困難だった性能テストもVHDの活用で便利になりそう

     しかし仮想環境では試せないテストもあります。性能テストが典型的です。古いバージョンのデータベースを使い続けてきたが、ついにバージョンアップせざるを得なくなった。新バージョンでは想定されている性能が出せるだろうか?

     あるいはOSを変えなければならなくなった、など、構成を変えて性能テストを行う場面というのは、ソフトウェアを開発している企業ならば動作テストの一要素としてやってくるでしょう。

     こういうときには、仮想環境ではなく実際の利用環境に近い状態でテストを行わなければなりません。ここでは、マイクロソフトのWindows Server 2008 R2や、Windows 7に搭載された新機能、VHDフォーマットが便利に使えそうです。通常のテストは仮想環境で行い、実環境での動作が必要になったらその仮想環境を使ってマシンをブートすればいいのですから。

     いままでマルチブート環境を用意しなければならなかった環境をVHDで非常に手軽かつ仮想環境とシームレスに運用できるようになるわけで、これでまたソフトウェアテストのプロセスが1つシンプル化でき、ソフトウェア開発における開発期間やコストの節約につながるのではないかと思います。

    新野淳一(「Publickey」 Blogger in Chief)

    月刊誌の編集、フリーランスを経て、2000年に(株)アットマーク・アイティの設立に参加。2008年に@IT発行人を退任し、現在はPublickey編集長/Blogger in Chief。

各賢人の意見はこれだ!
  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    VHDは仮想マシンのオマケ?否、主役になる可能性がある

     私はいくつかの媒体に技術記事を寄稿しているが、仮想マシンの検証にはずいぶん苦労する。ほとんどの機能は「Virtual PC」などの仮想マシンを使って検証を行うのだが、「Hyper-V」を含めた仮想マシンの検証だけは、仮想マシンではできない...(続きを読む)

  • 新井悠
    新井悠 (株式会社ラック サイバーリスク総合研究所 所長)

    マルウェア解析でも効果を発揮する仮想化テクノロジ

     筆者は仕事柄、マルウェア解析という作業を行うことがあります。その言葉の響きとは裏腹に、これは非常に地味な作業なのです。大量のアセンブラ命令を追い、その検体がいったいどのような感染動作を行うのか?などを、なるべく短時間に明らかにし...(続きを読む)

  • 後藤康成
    後藤康成 (フィードパス株式会社 取締役 CTO)

    ウェブアプリケーション開発でのVHD活用シナリオ

     僕は日常的にWindowsを利用していないことから、VHDについては馴染みが薄いが、Mac OSでいう.dmgの概念と同じようなものとして捉えるのがよいようだ。フィードパスではウェブアプリケーション中心の開発を行っていることから、ウェブアプリケーション開発でのVHDの効果的な利用方法について...(続きを読む)

  • 小山安博
    小山安博 (フリーランスライター)

    VHDのいいところはパフォーマンスが優れている点

     IT系の仕事をしていて、普段は使わないけど、意外に必要になってくるのが複数のOS。ソフトウェアを検証する際に、インストールは必要だけど検証のためだけに仕事の環境に導入したくない。そういったことがままあるからだ。

      そういうとき、WindowsであればVirtual PC、MacならParallels Desktopを使って...(続きを読む)

  • 吉田 実央
    吉田実央(けろ-みお) (株式会社アロウズテクノロジーズ)

    VHDの活用で削減できるコスト、できないコスト

     VHDのような仮想ディスクを導入した場合、削減可能なコストとしては、テストや動作検証を行う際の作業工数:作業効率UPに伴う人件費削減、ハードウェアの導入費用:初期費用の...(続きを読む)

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    仮想環境では試せない性能テストも容易に

      仮想化技術の普及で仕事が楽になったものの1つが、アプリケーションの動作テスト環境の構築であることは間違いないでしょう。さまざまなOSのバージョンに、さらにパッチのバージョンを組み合わせ、その上クライアント/サーバ型のソフトウェアであれば、さらに複数のデータベースのバージョンを組み合わせたりと、多数の環境を用意するには、物理的なマシンやハードディスクで環境を...(続きを読む)

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    コストと気持ちの両方に効くVHD

     Windows 7とWindows Server 20008 R2でサポートされた「VHD」、便利に活用しています。自分でイメージを作成する場合は、固定長と可変長のどちらを選択するかでパフォーマンスが多少異なるなど、運用にあたってのノウハウが必要となりますが、Microsoft TechNetで配布されている評価版ソフトウェアを利用するかぎり、ただマウントするだけですから、造作はありません。

     エンドユーザーの立場で考えた場合...(続きを読む)

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    インストールという付加価値のない作業からの開放

     Windows Server 2008 R2およびWindows 7で、ブート可能なVHDが使えるようになったのは...(続きを読む)

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http://japan.zdnet.com/extra/windows7_panel_200912/story/0,3800102051,20406477,00.htm
【識者に聞く】期待の仮想ディスクフォーマット「VHD」、あなたならどう使う?
企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部