海上忍の戦略

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    コストと気持ちの両方に効くVHD

    コスト面の効果を試算してみる

     Windows 7とWindows Server 20008 R2でサポートされた「VHD」、便利に活用しています。自分でイメージを作成する場合は、固定長と可変長のどちらを選択するかでパフォーマンスが多少異なるなど、運用にあたってのノウハウが必要となりますが、Microsoft TechNetで配布されている評価版ソフトウェアを利用するかぎり、ただマウントするだけですから、造作はありません。

     エンドユーザーの立場で考えた場合、このような仮想アプライアンス的な使い方が、最初に浸透するのではないでしょうか。インストールの手間がない、逆に言えばアンインストールの面倒もないということは「作業環境を汚さずに済む」わけですから、期間限定の評価版を試すには最適です。特にOSをテストする場合の時間節減効果は大きいと思います。

     以前、数多あるLinuxディストリビューションをテストするときには、いちいちHDDへインストールしていたものですが、現在多くのユーザーはISOイメージや仮想化ソフトのイメージファイルを利用するようになっています。ベンダーにとって、OS標準の機能として提供されるVHDは配布媒体として魅力的でしょうから、Windowsでも早晩そのような状況になることと予想しています。

     また、コスト面での効果も大きいでしょうね。仮にOSの試用版1本を新規インストールしたとして、内蔵HDDが1基で1万円、インストール/アンインストールにかかる人件費(仮に@5000円/1h)が計4時間で2万円。ユーザーの環境によってはセキュリティなどの前提条件が異なり、そもそもHDD増設が許されないかもしれませんが、この子算で3万円程度節約できる計算です。個人的には、インストールにまつわるトラブルで半日棒に振る、といった不確定要素に怯えず済むことがなによりの歓迎材料ですけれど。

    災害復旧用途の可能性もみえるVHD

     もう1つ、ディザスタリカバリ用フォーマットとしての今後にも注目したいと考えています。すでにWindows Vistaの「Complete PC バックアップ」、Windows Server 2008の「Windows Server バックアップ」でVHDの採用が始まっていますが、Windows 7ではHome系エディションもサポートされたほか、バックアップ先にネットワークを指定できるなど改良が施されています。強いて言えば、VHDがより身近な存在となっただけに、わざわざコントロールパネルにアクセスしなければならない「ディスクの管理」以外の管理ツールが欲しいところですが、いかがでしょうか。

    海上忍(フリーランス ITジャーナリスト)

     おもにUNIX系OSを対象として機能解説やレビュー、コラムなどを執筆。近年はbuilder by ZDNet JapanSoftware Re:Sourceなど、ウェブメディアを中心に活動を展開。

     著書は「Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊)など30冊以上。マイクロソフト社製品との付き合いはN-BASICにはじまり、MS-DOSやWindows NTなどのOS、ExcelやWordといったアプリケーションソフトまで広範囲に及ぶ。

各賢人の意見はこれだ!
  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    VHDは仮想マシンのオマケ?否、主役になる可能性がある

     私はいくつかの媒体に技術記事を寄稿しているが、仮想マシンの検証にはずいぶん苦労する。ほとんどの機能は「Virtual PC」などの仮想マシンを使って検証を行うのだが、「Hyper-V」を含めた仮想マシンの検証だけは、仮想マシンではできない...(続きを読む)

  • 新井悠
    新井悠 (株式会社ラック サイバーリスク総合研究所 所長)

    マルウェア解析でも効果を発揮する仮想化テクノロジ

     筆者は仕事柄、マルウェア解析という作業を行うことがあります。その言葉の響きとは裏腹に、これは非常に地味な作業なのです。大量のアセンブラ命令を追い、その検体がいったいどのような感染動作を行うのか?などを、なるべく短時間に明らかにし...(続きを読む)

  • 後藤康成
    後藤康成 (フィードパス株式会社 取締役 CTO)

    ウェブアプリケーション開発でのVHD活用シナリオ

     僕は日常的にWindowsを利用していないことから、VHDについては馴染みが薄いが、Mac OSでいう.dmgの概念と同じようなものとして捉えるのがよいようだ。フィードパスではウェブアプリケーション中心の開発を行っていることから、ウェブアプリケーション開発でのVHDの効果的な利用方法について...(続きを読む)

  • 小山安博
    小山安博 (フリーランスライター)

    VHDのいいところはパフォーマンスが優れている点

     IT系の仕事をしていて、普段は使わないけど、意外に必要になってくるのが複数のOS。ソフトウェアを検証する際に、インストールは必要だけど検証のためだけに仕事の環境に導入したくない。そういったことがままあるからだ。

      そういうとき、WindowsであればVirtual PC、MacならParallels Desktopを使って...(続きを読む)

  • 吉田 実央
    吉田実央(けろ-みお) (株式会社アロウズテクノロジーズ)

    VHDの活用で削減できるコスト、できないコスト

     VHDのような仮想ディスクを導入した場合、削減可能なコストとしては、テストや動作検証を行う際の作業工数:作業効率UPに伴う人件費削減、ハードウェアの導入費用:初期費用の...(続きを読む)

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    仮想環境では試せない性能テストも容易に

      仮想化技術の普及で仕事が楽になったものの1つが、アプリケーションの動作テスト環境の構築であることは間違いないでしょう。さまざまなOSのバージョンに、さらにパッチのバージョンを組み合わせ、その上クライアント/サーバ型のソフトウェアであれば、さらに複数のデータベースのバージョンを組み合わせたりと、多数の環境を用意するには、物理的なマシンやハードディスクで環境を...(続きを読む)

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    コストと気持ちの両方に効くVHD

     Windows 7とWindows Server 20008 R2でサポートされた「VHD」、便利に活用しています。自分でイメージを作成する場合は、固定長と可変長のどちらを選択するかでパフォーマンスが多少異なるなど、運用にあたってのノウハウが必要となりますが、Microsoft TechNetで配布されている評価版ソフトウェアを利用するかぎり、ただマウントするだけですから、造作はありません。

     エンドユーザーの立場で考えた場合...(続きを読む)

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    インストールという付加価値のない作業からの開放

     Windows Server 2008 R2およびWindows 7で、ブート可能なVHDが使えるようになったのは...(続きを読む)

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http://japan.zdnet.com/extra/windows7_panel_200912/story/0,3800102051,20406477,00.htm
【識者に聞く】期待の仮想ディスクフォーマット「VHD」、あなたならどう使う?
企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部