甲元宏明の戦略

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    インストールという付加価値のない作業からの開放

     Windows Server 2008 R2およびWindows 7で、ブート可能なVHDが使えるようになったのは、大変嬉しいことです。企業のIT部門やITベンダーにおいて、アプリケーションの評価や検証を行う人々にとって、すごい朗報だと思います。複数のOS、アプリケーション、異なるサーバ設定を維持管理する負荷が激減するでしょう。

     複数のサーバ・ハードウェア、OS、アプリケーションを相手にしている人にとって、最も煩わしく、付加価値のない作業が、インストール作業です。インストール作業から解放されるのであれば、すごいことだと思います。インストールの合間に昼ご飯を食べることができなくなる、と嘆く人もいるかも知れませんが……。

     ITRも、顧客企業に対して新技術の紹介や評価を行うことが多く、新しいOSやソフトウェアを評価する機会がよくあります。これまでは、評価のたびにサーバにインストールしたり新規の設定をしたりしていましたが、VHDの入れ替えだけで済ませるようになれば効果は大きいですね。今後、マイクロソフトの新製品や評価版は、すべてVHDフォーマットで提供していただきたいですね。

    Azure互換のVHDは出ないのか

     まだ実際に試してはいないのですが、Windows AzureではVHDをアップロードして実行することができるようです。これもすごいことです。自社でカスタマイズしたVHDをそのままWindows Azureで動かすことができるのですから。もちろん、Windows Azure VMとしてカスタムVHDを利用することはできないようです。

     Windows Azure Platform互換のVHDが登場したら、もっとすごいことになりますね。そのVHDを使ってプライベート・クラウドを構築できるとなると、世界は一変します。これまで主役であったWindowsサーバが、Windows Azureの脇役になってしまいます。マイクロソフトのソフトウェアはすべてAzureベースで動く、なんて時代が来るのかも知れません。

    甲元宏明(株式会社アイ・ティ・アール シニア・アナリスト)

     大阪大学大学院 工学研究科を修了後、三菱マテリアル株式会社に入社。新素材の研究開発に携わり、1988年米国イリノイ大学の客員研究員として渡米。帰国後、国家研究プロジェクト等の研究開発に携わりながら、研究関連の各種システムを開発。その後、情報部門に移り多くのITプロジェクトに携わる。2002年より当時国内では希有であったアジャイル型開発プロセスを活用して業務改革を主導した。また欧州企業との合弁事業においてグローバルIT責任者として、IT戦略の立案・推進を行った。現在ITRでは、IT戦略・ITアーキテクチャ・開発方法論・開発言語・クラウドコンピューティング・SaaS・オープンソース・ネットワークなどを担当。工学修士。

各賢人の意見はこれだ!
  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    VHDは仮想マシンのオマケ?否、主役になる可能性がある

     私はいくつかの媒体に技術記事を寄稿しているが、仮想マシンの検証にはずいぶん苦労する。ほとんどの機能は「Virtual PC」などの仮想マシンを使って検証を行うのだが、「Hyper-V」を含めた仮想マシンの検証だけは、仮想マシンではできない...(続きを読む)

  • 新井悠
    新井悠 (株式会社ラック サイバーリスク総合研究所 所長)

    マルウェア解析でも効果を発揮する仮想化テクノロジ

     筆者は仕事柄、マルウェア解析という作業を行うことがあります。その言葉の響きとは裏腹に、これは非常に地味な作業なのです。大量のアセンブラ命令を追い、その検体がいったいどのような感染動作を行うのか?などを、なるべく短時間に明らかにし...(続きを読む)

  • 後藤康成
    後藤康成 (フィードパス株式会社 取締役 CTO)

    ウェブアプリケーション開発でのVHD活用シナリオ

     僕は日常的にWindowsを利用していないことから、VHDについては馴染みが薄いが、Mac OSでいう.dmgの概念と同じようなものとして捉えるのがよいようだ。フィードパスではウェブアプリケーション中心の開発を行っていることから、ウェブアプリケーション開発でのVHDの効果的な利用方法について...(続きを読む)

  • 小山安博
    小山安博 (フリーランスライター)

    VHDのいいところはパフォーマンスが優れている点

     IT系の仕事をしていて、普段は使わないけど、意外に必要になってくるのが複数のOS。ソフトウェアを検証する際に、インストールは必要だけど検証のためだけに仕事の環境に導入したくない。そういったことがままあるからだ。

      そういうとき、WindowsであればVirtual PC、MacならParallels Desktopを使って...(続きを読む)

  • 吉田 実央
    吉田実央(けろ-みお) (株式会社アロウズテクノロジーズ)

    VHDの活用で削減できるコスト、できないコスト

     VHDのような仮想ディスクを導入した場合、削減可能なコストとしては、テストや動作検証を行う際の作業工数:作業効率UPに伴う人件費削減、ハードウェアの導入費用:初期費用の...(続きを読む)

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    仮想環境では試せない性能テストも容易に

      仮想化技術の普及で仕事が楽になったものの1つが、アプリケーションの動作テスト環境の構築であることは間違いないでしょう。さまざまなOSのバージョンに、さらにパッチのバージョンを組み合わせ、その上クライアント/サーバ型のソフトウェアであれば、さらに複数のデータベースのバージョンを組み合わせたりと、多数の環境を用意するには、物理的なマシンやハードディスクで環境を...(続きを読む)

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    コストと気持ちの両方に効くVHD

     Windows 7とWindows Server 20008 R2でサポートされた「VHD」、便利に活用しています。自分でイメージを作成する場合は、固定長と可変長のどちらを選択するかでパフォーマンスが多少異なるなど、運用にあたってのノウハウが必要となりますが、Microsoft TechNetで配布されている評価版ソフトウェアを利用するかぎり、ただマウントするだけですから、造作はありません。

     エンドユーザーの立場で考えた場合...(続きを読む)

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    インストールという付加価値のない作業からの開放

     Windows Server 2008 R2およびWindows 7で、ブート可能なVHDが使えるようになったのは...(続きを読む)

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http://japan.zdnet.com/extra/windows7_panel_200912/story/0,3800102051,20406477,00.htm
【識者に聞く】期待の仮想ディスクフォーマット「VHD」、あなたならどう使う?
企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部