脅威インテリジェンスのアナリストらは、かなり以前からハクティビズムが死に体だと主張してきた。このことは、IBM X-Forceが米国時間5月16日に公開した新たなデータによっても裏付けられている。同データによると、ハクティビストの活動は2015年以来95%減少し、ハクティビズムが壊滅状態になっているという。
提供:IBM X-Force
IBMの調査によると、ハクティビズムを掲げて行動するハッカーグループが引き起こし、公になったセキュリティインシデントは、ピークを記録した2015年の35件から減少を続けているという。
2015年以降、インシデントは徐々に減少しており、報告件数は2017年が5件、2018年が2件、そして2019年はこれまでのところなしとなっている。
ハクティビストグループによる攻撃は続いているが、実際のインシデント数(侵入件数)は着実に減少している。
減少の要因として、リサーチャーらはハッカー集団Anonymousによる活動の減少と、司法当局による地道な取り締まりによるハクティビストの減少を挙げている。
ハクティビストの活動減少を引き起こした最大の要因はおそらく、Anonymousの分裂にある。IBMによると、同集団はハクティビストによるものとされるセキュリティ侵害の45%近くに関与していたという。
提供:IBM X-Force
Anonymousのハッカーらは、かつては人道主義、あるいは社会的な大義に基づくさまざまな目的で企業や政府のネットワークに侵入していた。しかしIBMによると、2016年頃から政治色の強いキャンペーンに関与し始めたことで、同グループの名前は今や輝きを失い、その結果多くのメンバーが去ってしまったという。
Anonymousは近年、白人至上主義グループKKKのメンバーを暴露する#OpKKKや、テロ集団ISISのメンバーを暴露する#OpParis、ISISのメンバーや拠点を暴露する#OpISIS、日本やアイスランドの捕鯨当局のサイトを攻撃する#OpWhale、銀行や金融機関を攻撃する#OpIcarusといったキャンペーンによって政治関連の組織から盗み出した(場合によっては改ざんした)データを暴露している。
こうしたことが、「fake Anons」(偽のAnonymous)という言葉が生まれることにつながった。これは、さまざまな社会的/政治的プロパガンダを促進したり、Anonymousコミュニティーから金銭的利益を得ようとする、Anonymousとは直接関係のない者や、個人的な目的で活動している匿名の人物を指す言葉だ。
fake Anonsによって、かつて共通する信念に基づいて行動していたAnonymousは、個々の信念に従って、場合によっては他のAnonymousグループとはまったく逆の意見に基づいて行動する小さな独立部隊へと分かれていった。その結果、世間やメンバー間で混乱が引き起こされるようになった。リーダーシップの欠如とテーマの混乱によって、メンバーは少しずつAnonymousから離れていっている。