本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、KPMGコンサルティングの浜田浩之 執行役員パートナーと、IIJの山井美和 常務執行役員の発言を紹介する。
「シャドーITは“ビジネスマネージドIT”として活用されるようになってきた」
(KPMGコンサルティング 浜田浩之 執行役員パートナー)
KPMGコンサルティングの浜田浩之 執行役員パートナー
KPMGコンサルティングが先頃、世界108カ国の3645人(日本は41人)のCIO(最高情報責任者)やITリーダーを対象に実施した意識調査「Harvey Nash/KPMG 2019年度CIO調査」の日本語版を公開し、概要について記者説明会を開いた。
冒頭の発言はその会見で説明に立ったKPMGコンサルティング テクノロジー・トランスフォーメーション・グループ統括 執行役員パートナーの浜田氏が、シャドーITに関する調査内容について述べたものである。
同調査の全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではシャドーITに関する内容について取り上げたい。
浜田氏はまず、企業のIT投資の中でIT部門以外の事業部門が管理する割合が、着実に増えてきていると指摘。今回の調査では多くの企業が全体の1〜2割以上になっていると回答したという。
そうした状況から、浜田氏は「事業部門が独自に導入してきたITはこれまで、IT部門から見えにくいということで『シャドーIT』と呼ばれてきたが、これからはむしろ積極的に活用する動きが出てきたことを踏まえて『ビジネスマネージドIT』と呼ぶようにした。この動きは今後も増えていくだろう」と説明した。
図の円グラフは、そのビジネスマネージドITである事業部門主導のIT支出における企業の姿勢を表したものである。この調査から図の右側に記されている内容が明らかになったとしている。とりわけ、一番上に記されている「約3分の2(53%+11%)の組織がビジネスマネージドITへの投資を許可」している実態が浮き彫りになった。
シャドーITに関するCIO調査結果(出典:Harvey Nash/KPMG 2019年度CIO調査)
浜田氏はさらに、11%の組織がビジネスマネージドITに積極的に投資していることについて、「顧客優位性の向上」「サービスなどの市場投入までのリードタイムの短縮化」「従業員満足度の向上」などにつながると指摘した。
一方で、36%の組織はビジネスマネージドITにIT部門が関与していない点について、全体としてのITガバナンスの不足や、サイバー攻撃に対して準備が不足したり標的になったりする可能性が高いことなどをリスクとして挙げた。
筆者が注目するのは、ビジネスマネージドITの取り組みが、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のきっかけになるケースが増えてくるのではないかということだ。いずれにしても、これまでのシャドーITの多くが「日なた」に出てくるのは間違いなさそうだ。