本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、電子情報技術産業協会 会長の遠藤信博氏と、NTTデータ Executive Security Analystの新井悠氏の発言を紹介する。
「JEITAは産業と産業のつなぎ役として、新たなビジネス創出を促したい」
(電子情報技術産業協会 遠藤信博 会長)
電子情報技術産業協会の遠藤信博 会長
電子情報技術産業協会(JEITA)が先頃、都内ホテルで新年賀詞交換会を開いた。冒頭の発言は、あいさつに立った遠藤氏(NEC会長)が「産業と産業のつなぎ役」を強調しながら語ったものである。
遠藤氏は最近の社会の変化について、「情報社会からデータ社会への変遷の狭間にあり、価値の源泉が情報からデータに大きく移行しつつある」とし、それを受けて「日本においてはSociety 5.0に向けた動きが社会全体として感じられるようになってきた」と話した。
Society 5.0が目指す社会像については、「データ、AI(人工知能)、デジタルプラットフォームなどを活用することにより、誰もが価値を創り出すことができる人間中心の社会。さらには、その価値創造を通して人間社会の持続性が可能になる社会」と説明した。
その上で、「コンピューティングパワー、5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク、AIなど、データを源泉とした価値創造能力の環境が劇的に進化することによって、データによる価値創造の適用範囲が広がる。また、広範囲のデータを集めることで、部分最適から全体最適へと広がる高い価値が得られるようになってきている」とし、次のように強調した。
「その全体最適解を得るためには、まず高次の価値目標、すなわちKGI(主要成功要因)を共有するチーム形成が必要であり、価値を共有する人間社会、企業間での共創なくして大きな価値は創造できない」
こうした社会の変化に対し、遠藤氏はJEITAもここ数年で大きく変わってきたことに言及。「2017年度に事業指針として『Society 5.0の推進』を掲げ、業種・業界を超えて社会課題の解決に向き合う、あらゆる産業が集うプラットフォームとしての業界団体になるべく、変革に取り組んできた」と説明した。
そして、あいさつの最後をこう締めくくった。
「デジタルトランスフォーメーション、そしてSociety 5.0の実現を支えるのは、まさに電子情報産業にほかならない。未来の日本、そして世界のために、業種・業界を超えて、より一層連携していこうではないか。それぞれの強みを生かしながら、共創や協調を推進していこうではないか」
遠藤氏のアドリブなのだろう。型通りではない、気持ちの入った呼び掛けだった。新年賀詞交換会に相応しい会長のあいさつだと感じた。
電子情報技術産業協会(JEITA)が1月7日に都内ホテルで開いた新年賀詞交換会