ガートナー ジャパンは4月3日、新型コロナウイルス感染症への対応として企業の最高情報責任者(CIO)がすぐに行動に移すべき項目を発表した。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界中の企業が影響を受け始めている。グローバル企業のCIOは、情報収集、事業継続計画(BCP)/ディザスタリカバリー(DR)の展開、そして従業員に対するリモートワーク環境の提供に追われている。ガートナーは、こうした状況における日本企業の対応は「好意的に見れば冷静さが、厳しく評価すればリスクに対する感度の低さが見受けられる」と分析する。
同社 ディスティングイッシュト バイスプレジデントでフェローの足立祐子氏は次のように述べる。「日本のCIOは、一層のスピード感を持って迅速な対応を進めるべきとき。日々の目前の課題を解決することはもちろん重要だが、CIOは戦略的なリーダーの一員であることを意識し、今までにない強力なリーダーシップを発揮しなければならない。特にグローバルIT部門を率いるグローバルCIOは、各拠点が置かれた状況の変化を把握しつつ、さまざまなシナリオに備えた施策を打ち出すことで、先行きが読めないパンデミックによる悪影響を最小限に抑え、困難を乗り越えることができる」
上記の点を踏まえ、ガートナーでは、「IT戦略/ガバナンス」「IT投資」「IT人材/組織」の観点から、想定される影響とCIOが取るべき対応を次の通りに解説した。
IT戦略/ガバナンス
多くの日本企業は、非常事態に対する事業継続管理(BCM)プログラムの準備が不完全なために、企業全体として適切な対応を取れていない。また、IT部門としても緊急時のガバナンスを検討していないため対応が遅れたり、リモートワークの環境を整備できていなかったりするという課題に直面している。また、日本企業の中には、今回のパンデミックがIT戦略やIT部門の活動にどのような影響を及ぼすのか全く見えていないため、IT戦略などはそのままにし、パンデミックが収まってから修正をかける予定にしているところも多く見られる。
アナリストでバイスプレジデントの藤原恒夫氏は次のように述べる。「まずはCEO(最高経営責任者)を含め必要な関係者を巻き込んで、非常事態に対する危機管理計画とBCMプログラムの準備および再点検を行い、対応を開始することが重要。また、リモートワークについて言うと、今回のパンデミックは、日本でもデジタルホームオフィスの設置を促進することになる。システム環境を整えると同時に、勤務場所、勤務時間や勤務形態に関して柔軟な選択肢を提供した上で、人事規定の内容を再確認し、政府の方針発表を注視しつつ、運用ルールを必要に応じて追加または緩和することが求められる」