GitHubの最高経営責任者(CEO)は、奴隷制度に関係する用語を不必要に使用するのを避けるために、「マスター」という用語を「メイン」などの中立的な用語に変更する取り組みを進めていることを明らかにした。
既に、GitHub以外にも多くのIT企業やオープンソースプロジェクトが、黒人コミュニティーが不快に感じる可能性がある用語をなくす活動に対して支持を表明している。
これには、「マスター」や「スレーブ」を「メイン、デフォルト、プライマリー」や「セカンダリー」に変更することだけでなく、「ブラックリスト」や「ホワイトリスト」を「拒否リスト」や「許可リスト」に変更することなども含まれる。
ITコミュニティーでは、全米で巻き起こっている「ブラックライブズマター」(BLM)運動に拍車をかけられる形で、こうした用語をソースコードやソフトウェア、オンラインサービスからなくす取り組みが再び注目を集めている。
GitとGitHubはどちらも、ソースコードリポジトリーのデフォルトバージョンを表す用語に「マスター」を使用している。開発者は、「マスター」バージョンをフォークさせて、2次的なバージョンを作成し、それに自分のコードを付け加えて、その後変更内容をマスターにマージする。
既に、多くのオープンソースプロジェクトが、デフォルトのGitリポジトリーの名前を「マスター」からメイン、デフォルト、プライマリー、ルートなどの別の用語に変更しつつある。
米国時間5月12日、「Google Chrome」の開発者Una Kravets氏は、Chromeプロジェクトではソースコードのデフォルトブランチの名前を「マスター」から「メイン」などのより中立的な用語に変更することを検討しているとツイートした。
その後Kravets氏が、GitHubもGoogleの動きに追随し、業界全体での取り組みを後押ししてほしいとTwitterで発言したところ、GitHubのCEOであるNat Friedman氏は直ちにこれに反応し、同社でも既にこの問題に取り組んでいることを明らかにした。
GitHubがこの流れを後押しすれば、今後数百万のプロジェクトからこの用語をなくし、ソフトウェアに関する用語を変更する取り組みに正当性を与えることにつながる可能性がある。
実際には、この種の取り組みは数年前から始まっている。最初に「マスター・スレーブ」という用語を「プライマリー・レプリカ」で置き換えたのは、「Drupal」プロジェクトだ。
この動きに、「Python」や「Chromium」、Microsoftの.NETコンパイラー「Roslyn」、データベースシステムの「PostgreSQL」や「Redis」などが続いた。
ところが、いくつかの大きなプロジェクトがこの動きに追従したにもかかわらず、ソフトウェアで使われている言葉を修正しようという取り組みはあまり広まっていなかった。
この種の議論では、「マスター・スレーブ」という用語は実際の奴隷制度を意識したものというよりは、技術的なシナリオを説明する用語として使われているので問題はないという主張や、「ブラックリスト」という言葉は黒人とは関係がなく、中世時代の英国で、問題があった労働者を将来雇い入れることを避けるために黒い背表紙の本にリストを作成した慣習からきているといった反論が出ることが多い。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。