最先端テクノロジーの導入で先行している企業もあれば、遅れをとっている企業もあるのは周知の事実だ。しかし、企業が「持てる者」と「持たざる者」に分けられるという図式は、あまりにも単純すぎるかもしれない。企業のある部署は、ホールの先の別の部署よりもデジタル面で進んでいるなど、真の課題は社内に存在する可能性がある。そしてIT部門自体が、はからずも進歩を妨げていることも少なくない。
Harvard Business Reviewの調査で、組織内におけるこの格差の程度が明らかになっている。AccentureのRamnath Venkataraman氏が率いるチームが作成した報告書は、「多くの企業で、自動化や人工知能(AI)のツールにすぐにアクセスできるチームと、そうでないチームとの間で溝が広がっている。後者は生産性とAIスキル開発の両方で、不利な状況にあると考えている」と指摘した。
Venkataraman氏と共同執筆者らによると、調査対象となった企業の3分の2が、「クラウドとオンプレミスのシステムが混在した、最適とは言い難い企業システムに依存している」。そして問題をさらに悪化させているのは、IT部門が保守管理と維持に追われる一方、マーケティング部門や事業部門は、最先端のソリューションを業務で使用していることだという。「ITチームは、そうしたシャドーシステムを熟知できておらず、サポートやアップグレードする能力にも支障をきたしている」
提供:Joe McKendrick
IDCが2019年5月に実施した調査によると、欧州の企業でIT支出の約59%がIT部門からの支出であり、41%はIT部門以外の支出だという。2017〜2022年にかけて、業務部門のテクノロジーに対する支出が年平均5.9%増加し、IT部門の年間2.9%を上回る見通しだ。
報告書を執筆したAccentureのチームによると、とりわけ開発者がこうした格差の影響を受けやすい。「開発者によっては、1日の60%を自動化可能なタスクに費やすかもしれない。一方、AIツールを活用してそのような活動を行っているプログラマーは、コーディングをより短時間で行える。またAIシステムとの協業にも精通し、ミスをおかしにくい傾向がある」
テクノロジー開発に対する不均等なアプローチを克服するカギは、全社的なコラボレーションの強化だという。社内にある部門間の壁を取り払い、シャドーITシステムを明るみに引き出すように奨励している。報告書は、「何十年分ものレガシーコードの負担から、過去のものを修正するために、IT予算の80%を使い、将来のための革新に20%しか費やしていない」企業の例を引き合いに出している。
その企業は、そうしたシステムを自動化しようとする代わりに、「デジタルネイティブな競合他社のスピードと革新を上回るべく、大規模な改革に乗り出した。垂直型の最新のエンジニアリングモデルを採用し、ビジネスの専門家とフルスタックエンジニアによる統合チームが、アジャイル開発の手法を使って協業できるようにした。そしてIT資産を100%クラウドに移行することで、実質的にすべてのチームと社員が、自動化ツールを平等に利用できるようにした」。
(情報開示:この12カ月間、筆者は独立した研究アナリストとして、本稿で言及しているIDCのプロジェクト作業を行ってきた)。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。