日立製作所は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託され、タイ発電公社(EGAT)と「電圧・無効電力オンライン最適制御システム」の実証事業を12月から開始した。
同実証事業では、EGATの送電系統に、電圧・無効電力オンライン最適制御システム(OPENVQ:Optimized Performance Enabling Network for Volt/var〈Q〉)を導入し、電力系統運用の高度化・効率化を通じて温室効果ガス排出量の削減を目指す。また、二国間クレジット制度(JCM)活用による温室効果ガス排出削減効果の定量化を図る。
実証システムの概念と期待される効果
導入予定のOPENVQは、系統制御システムから電力系統の設備データや計測データを取り込み、発電計画や気象予測などの外部情報と組み合わせることで、将来の系統潮流・需給バランスを予測する。さらに電圧安定度を確保した上で、電圧・無効電力をオンラインで最適制御することにより、送電ロスの抑制をはじめとした電力系統運用の高度化・効率化を実現する。
実証事業では、OPENVQとEGATが運用する給電指令所のSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムを連携させ、送電系統の計測データ、高精度需要予測技術および高信頼の最適潮流計算を用いて送電系統の電圧・無効電力を最適化させ、送電ロスを抑制する。これにより、送電ロス抑制分に相当する火力発電所の燃料調達費および系統運用に関わる二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献できる。また、送電系統の電圧の最適化により送電可能容量が増えることから、送電設備の増強に多額の投資を行うことなく、再生可能エネルギーから供給される電力の安定送電を実現できる。
さらに、JCMのMRV(Measurement, Reporting and Verification:温室効果ガス排出量の測定、報告および検証)方法論を開発し、実証事業におけるCO2排出削減量をクレジット化することにより、日本とタイ両国のCO2削減に貢献することを目指す。今回の実証事業においては、送電ロス抑制に伴い、年間1万〜2万トン程度のCO2排出量削減が見込まれている。
日立は今回の実証事業の分析・評価結果をもとに、OPENVQを差別化技術とし、タイと同様のニーズが見込まれるASEAN諸国をはじめとするアジア市場を中心に、グローバル市場への水平展開を検討していく。