パーソル総合研究所は8月17日、東京五輪開催と緊急事態宣言の発出に伴うテレワークの状況把握を目的にした最新調査の結果を発表した。正社員の実施率は27.5%で、4月の前回調査から0.4ポイント減とほぼ変わらず、東京五輪に伴うテレワークの呼び掛けや緊急事態宣言の効果が極めて限定的だったと結論付けた。
調査は5回目で、7月30日~8月1日に2万人規模でアンケートを行った。テレワーク実施率は、正社員(全国平均)では2020年11月の前々回調査から2.8ポイント増加したものの、2020年4月の第2回調査における27.9%とほどんど変わらなかった。都道府県別では、東京都が47.3%で最も高いが、第2回調査の49.1%から減少した。非正規雇用(パート・アルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員)の実施率は17.6%、公務員・団体職員では14.0%にとどまった。
出所:パーソル総合研究所
従業員規模別(正社員)の実施率は、従業員1万人以上では45.5%、従業員10~100人未満では15.2%で、第2回調査以降、大企業と中小企業のテレワーク格差が縮まらないままでいる。業種別(正社員)で50%台を超えたのは情報通信業(60.0%)のみだった。職種別(正社員)ではIT系技術職が63.2%で最も高く、この他に50%台を超えたのは企画・マーケティング、ウェブクリエイティブ、コンサルタント、経営企画、商品開発・研究、広報・宣伝・編集だった。
コロナ禍後のテレワーク希望については、テレワーク実施者では「実施したくない」が8.3%だったのに対し、非実施者では56.9%に上った。また、希望する実施頻度は、テレワーク実施者では「1週間に2~3日程度」が27.9%で最も多く、非実施者では「毎日(出社なし)」が14.7%で最多だった。
テレワークを行っていない理由では、「テレワーク制度が整備されてない」(31.4%)と「ICT環境が整備されていない」(11.9%)が、これまでの5回の調査で最低値となり、整備が進んでいる様子がうかがえた。テレワークに関する企業の方針は、「特に案内がない」が58.4%で最も多い。ワクチン普及後のテレワークに関する企業の方針でも「説明されていない」が58.8%で最多だった。
出所:パーソル総合研究所
同社 上席主任研究員の小林祐児氏は、「ワクチン接種や飲食店への要請ばかりに注目が集まる中で、企業側にも働き手側にも出社減によって人流を減らそうという意識はあまり見られなかったと結論付けられる。今後もテレワークは働き方の選択肢として維持されるべきであり、職場の同調圧力などによってなし崩し的に出社が増えることは望ましくない。ポストコロナを見据え、今後の自社の働き方の方針を定め、組織内にしっかり周知すべき」とコメントしている。