本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本NCR 代表取締役社長の小原琢哉氏と、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏の発言を紹介する。
「これからもお客さまのエッセンシャルビジネスをしっかりとサポートしていきたい」
(日本NCR 代表取締役社長の小原琢哉氏)
日本NCR 代表取締役社長の小原琢哉氏
日本NCRは先頃、今後の事業戦略と小売業向けの新たなクラウドサービス体系「NCRコマースプラットフォーム」の国内での提供開始について、オンラインで記者説明会を開いた。小原氏の冒頭の発言はその会見で、NCRの使命について強調したものである。
NCRといえば、金融および流通小売分野にフォーカスして、特に銀行のATMや小売店のPOSレジでは今も市場をリードしている老舗のITベンダーだが、ここ10年ほどで従来のハードウェア中心からソフトウェア・サービス重視へと大きく転換し、今ではクラウド活用にも積極的に乗り出している。
米国本社は138年、日本法人も102年の歴史を持つNCRは、IT分野の厳しいサバイバル競争をどうやって生き抜いてきたのか。そして、これからどうやって存在感を発揮し続けていくのか。
それを一言で言い表していると筆者が感じたのは、NCRが2022年から新たに掲げているミッション“RUN the X”だ。同社がこの言葉に込めたメッセージは図1に記されている通りだが、小原氏はその内容について次のように説明した。
図1:新たなミッション“RUN the X”の意味(出典:日本NCRの会見資料)
「RUNは走り続けることだが、言い換えると『止まってはならない』ことを意味する。Xには小売や銀行など当社のお客さまのビジネスが当てはまる。小売や銀行などはもともと人々の生活にとって必要不可欠なエッセンシャルビジネスだが、昨今のコロナ禍において、それが再認識された形になった」
さらに、こう続けた。
「当社はそうしたお客さまの『止まってはならない』エッセンシャルビジネスをサポートする役割を担っている。したがって、保有するテクノロジーやサービスを駆使して、その役割をしっかりと果たしていきたい。“RUN the X”という言葉にはそうした思いを込めている」
冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。そして同氏によると、このミッションの実現に向けて今回市場投入したのが、NCRコマースプラットフォームである。この新たなクラウドサービス群の内容については発表資料をご覧いただきたい。
会見の質疑応答で、日本NCR社長に就任してこの3月で3年になる小原氏に経営トップとしての今後の意気込みを聞いたところ、次のようなコメントが返ってきた。
「当社の歴史は長く続いているが、同様に長い歴史を歩んでこられたお客さまも少なくない。そうしたお客さまにも最新のテクノロジーとサービスを提供して、ダイナミックにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していっていただけるようにしっかりとサポートしていきたい」
小原氏はこれまで日本IBMや日本マイクロソフトなどの要職を歴任するなど、およそ40年にわたってIT業界に携わってきた。筆者も過去に幾度か取材の機会を得て印象深い話を聞いた覚えがある。そんな同氏の今後の経営手腕に注目していきたい。