日本のCIOはクラウド移行に消極的--ガートナーのCIO調査

ZDNet Japan Staff

2011-03-03 15:09

 ガートナー ジャパンは3月3日、同社のエグゼクティブ・プログラム (EXP)において行った、「CIOが抱える次年度の課題」に関する調査の結果を発表した。

 調査は2010年10~12月に行われ、2011年のCIOの課題について全世界で2014人以上のCIOから回答を得た。回答を寄せたCIOは世界50カ国のあらゆる業種の企業、政府、公共機関に所属し、そのIT予算の合計は14兆円以上に達するという。日本においては、EXPメンバーを含む、さまざまな産業の企業に所属する76人のCIOから回答を得た。回答企業のIT予算の合計は1兆8000億円超に上り、1社当たりのIT予算は250億円程度になるとしている。

 ガートナー ジャパンでは、この調査の結果から、日本のCIOと世界のCIOの間には、次のような特徴が見られたとしている。

  • 2011年のIT予算について、前年度に比較して増加すると回答したCIOは、世界では40%に上ったのに対し、日本では21%。一方で、減少すると回答した比率は、世界では16%、日本では26%。前年比のIT予算増加率の平均値は、世界では1.0%の増加に対し、日本では0.2%の増加という結果に。これらの結果から、日本は世界平均に比べてIT投資にやや消極的になっていることがうかがえる。
  • CIOの成功にとって最も重要な要因については、「ビジネス成果」および「ビジネス知識」と回答した比率が、世界では66%、日本では46%。一方で、「IT組織以外の部門や経営層との関係性」と回答した比率が、世界では22%、日本では33%に上った。日本のCIOは、世界のCIOに比べると、自身の成功について、ビジネス成果よりも社内の交渉力を重視している傾向が見られる。
  • IT戦略がビジネス戦略とどの程度関連しているかとの問いに対して、「極めて密接に関連している」および「密接に関連している」と回答したCIOは、世界で81%に上ったが、日本では68%。
  • 自社のコンピュータによる情報処理量の半数以上をSaaS環境(クラウドコンピューティングの一種)に移行するのはいつごろと予測しているかという問いに対して、世界では53%が「2015年までに移行するであろう」と回答しているのに対して、日本では同回答は25%にとどまる。一方で、「2021年以降」もしくは「移行不可能」と回答した割合は、世界では19%であったのに対し、日本では43%に上った。
  • これらの特徴に対して、ガートナーは、日本のCIOは、ITがビジネスに及ぼす影響力を明確なビジネス成果として表すことを、世界の平均的なCIOに比べて不得手としており、他部門や経営者との交渉力でカバーする傾向があると分析している。また、日本のCIOは、世界のCIOに比べてIT戦略をビジネス戦略にうまく合致させられないことや、IT戦略そのものを説明する能力に長けていないなどの理由も重なり、その結果、経営トップやビジネス部門からのIT部門への期待感が薄れてしまい、IT投資が世界平均に比べて消極的になってしまうのではないかと見ている。
  • 一方、クラウドコンピューティングなどの領域に関して、日本のCIOは、世界のCIOに比べて明らかな消極姿勢を見せているとし、今後これらのテクノロジが企業内のIT資源の効率化に期待されていることから、日本のIT環境は、世界に比べてIT資源の効率化が遅れる可能性を指摘している。IT予算については、全世界レベルで平均的に増加の傾向が見られない中、IT資源の効率化を促す新たなテクノロジの導入に遅れたために、世界のITがビジネス指向に変革し、ビジネス部門からのイノベーションへの期待に応えようとする中、日本のITはこれらの変革に後れを取ってしまい、近い将来、日本のビジネスが国際競争力を失ってしまう恐れがあるのではないかと、ガートナーは指摘している。

 ガートナーでは、これらの分析結果から、日本のCIOに向けて、従前のIT組織やIT資源の延長線上で2011年以降のビジネス成長戦略に合致したIT戦略を描くことは難しく、新たなビジネス成長戦略に合致した「新たな発想でITを再構築」することが必要であると提言している。

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