米Microsoftがクラウド事業で競合相手と幅広く手を組み始めている。その狙いはどこにあるのか。
Oracle、SAP、Salesforce.comと相次いで提携
「クラウド事業では競合相手とも幅広く手を組む必要がある」――日本マイクロソフトの樋口泰行社長は7月2日、同社が開いた2015年度(2014年7月~2015年6月)の経営方針に関する記者会見でこう語った。樋口氏が特にその対象として挙げたのは、パブリッククラウドのIaaS/PaaS型サービス「Microsoft Azure」である。

日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏
実際、Microsoftは2013年来、米Oracle、独SAP、米Salesforce.comといった競合と相次いで戦略的提携を結び、Azure上で各社の製品やサービスを利用できるようにしつつある。
では、なぜMicrosoftは競合相手と幅広く手を組もうとしているのか。樋口氏によると、それは今年2月に米国本社の最高経営責任者(CEO)に就任したSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が打ち出した方針にあるようだ。
Nadella氏はクラウド事業について「クラウドファースト」を明確に掲げ、Azureについても今年4月に冠名を「Windows」から「Microsoft」に変更して、Windowsにこだわらないクロスプラットフォーム戦略を打ち出した。
さらにNadella氏は最近、「Usage」という言葉にこだわっているとか。直訳すれば使用法あるいは使用率だが、樋口氏曰く「使ってもらってなんぼ」という意味だそうだ。この「使ってもらってなんぼ」という考え方が、Azureでは冠名の変更に反映され、競合相手とも幅広く手を組む動きにつながっているようだ。
どういうことかといえば、「使ってもらってなんぼ」のサービスにするためには、まず使いやすいものでなければならない。クラウドサービスとしてさらに使いやすいものにするためには、Windowsにこだわらないクロスプラットフォームのほうがいいし、ユーザーが求める製品やサービスも合わせて利用できるようにしたほうがいい。それがたとえ競合相手のものでもだ。
日本マイクロソフトの幹部によると、かつてクラウドサービスも担当したことがあるNadella氏は、Azureを「何でも載せられるクラウドプラットフォーム」にしたいと考えているという。
宿敵AmazonとGoogleの勢いをそぐ狙いも
つまりは、ユーザーにとっての使いやすさの追求が、競合相手と幅広く手を組もうとしている狙いというわけだが、その裏側にはAzureを取り巻く競合状況をにらんだMicrosoftのしたたかな思惑もありそうだ。
MicrosoftがAzureを取り巻く競合として強く意識しているのはAmazonとGoogleだ。同社がこの2社と大きく異なるのは、「クラウドOS」という戦略を打ち出している点だ。
クラウドOSとは、ユーザー企業が所有するオンプレミスを含めたプライベートクラウド、サービスプロバイダーが提供するパートナークラウド、そしてMicrosoftが提供するパブリッククラウドに対して、一貫したプラットフォームを提供しようというものである。
この戦略は取りも直さず、Windows環境においてすでに多くのオンプレミスユーザーを保有し、多くのパートナーからなるエコシステムを形成しているMicrosoftの強いアドバンテージとなるところだ。それに加えて、OracleやSAPとはクラウドでもパートナーシップを強め、クラウドサービス専業最大手のSalesforce.comとも新たに手を組んだというのが今の状況だ。
こうしたMicrosoftの取り組みがきっかけとなって、今後はパブリッククラウド市場でもIaaSを含めたPaaSがクラウドプラットフォームの主戦場となり、さらにはその上で利用されるSaaSの群雄割拠時代が訪れるかもしれない。
Microsoftにとっては、そうして戦う“土俵”を変えることが、今のAmazonとGoogleの勢いをそぐ有効な手段ともなり、ひいてはクラウド時代の覇者へと上り詰めるシナリオが描けるようになるだろう。Nadella氏の登場でMicrosoftのクラウド戦略はかなり柔軟性を帯びてきたようだ。
