IBMが提供するIaaS型サービス「SoftLayer」に対する注目度が高まってきている。同社が仕掛けたこの一手は、クラウドサービス市場にさまざまなインパクトをもたらしそうだ。
SoftLayerは、同じIaaS型サービスを提供するAmazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleといった競合に対して、IBMが真っ向から勝負に挑んだものだ。
IaaS市場にいきなり食い込んだIBM
会見に臨む日本IBMの小池裕幸 執行役員 クラウド事業統括
2013年秋ごろまでのグローバルでのIaaS型サービス市場は、先行するAWSをMicrosoftとGoogleが追いかけるという三つ巴の戦いだったが、2013年夏にIBMがSoftLayerを買収したことで、同市場にIBMがいきなり入り込んできた格好だ。
米シナジーリサーチグループによると、2013年10~12月のグローバルでのIaaS型サービス市場シェアは、AWSが28%、IBMとMicrosoftが共に7%、Googleが5%。AWSとの差はまだ開きがあるものの、IBMはいきなり同率2位に食い込んでいる。
SoftLayerはもともと米国を中心としたIaaS型サービス市場で大手の一角に名を連ねていた。それを買収したことで、IBMはAWS追撃の筆頭格にのし上がってきたわけである。
勢力示すパートナーエコシステム
SoftLayerの展開は、日本市場でも着実に進められている。日本IBMが先ごろ、クラウド事業の強化について記者会見を開いたが、その強化項目の1つとして「SoftLayerによるパートナーエコシステムの拡大」を挙げていた。
日本IBMでクラウド事業を統括する小池裕幸 執行役員の話によると、SoftLayerの価値は「グローバルレベルでの高速ネットワークを瞬時に利用できる」「世界中からのトラフィックを高速ネットワーク経由で集約できる」「データ同期や負荷分散を支える高速な拠点間専用ネットワークを配備している」といった3点に集約されるという。
その上で、最近ではそうしたSoftLayerをベースに付加価値をつけてビジネスを展開するパートナー企業とのエコシステムが大きく広がりつつあるという。実はAWSもパートナーエコシステムが広がっていることで勢力を伸ばし続けており、MicrosoftやGoogleも非常に力を入れている領域だ。そうした中で、IBMがどれだけの“仲間作り”を図れるか。1つの大きなポイントになるだろう。
注目されるHP、Oracle、SAPの動き
さらに、SoftLayerがもたらすインパクトということで挙げておきたいのは、IBMと同様、エンタープライズあるいはミッションクリティカルといわれる市場において強みを発揮してきたHP、Oracle、SAPといったビッグネームが展開するクラウドサービスにどんな影響を及ぼすかだ。
この3社からは、今のところ同様のサービスを仕立てて追随する動きは見られないが、AWSのサービスがここにきてエンタープライズあるいはミッションクリティカルといわれる仕組みに次々と適用されている状況を踏まえると、3社ともIaaS型サービスに対する立ち位置を明確にする必要があるだろう。
OracleとSAPはIaaSも包含したPaaS型サービスを主軸にすると見られるが、果たして壮絶な戦いを繰り広げているIaaS型サービス市場の動きに引きずり込まれないで済むだろうか。そう考えると、これからのクラウドサービス市場はさらにダイナミックな動きが巻き起こりそうだ。IBMが仕掛けたSoftLayerの動きは、そうしたクラウド大戦の“号砲”のような気がしてならない。