日本IBMは4月9日、IaaSのハイブリッドクラウドサービスとして展開している「IBM Cloud Managed Services(CMS、3月にSmarterCloud Enterprise+から名称変更)」のラインアップを拡充することを発表した。
旧SmarterCloud Enterprise+で国内で提供していた“共用プライベートクラウド(Shared Private Cloud)”に加え、新たに“専用プライベートクラウド(Hosted Private Cloud)”と“マネージドプライベートクラウド(Remote Point of Delivery:リモートPoD)”を提供する。
専用プライベートクラウドは、IBMサイトでユーザー企業のプライベートクラウド環境を運用するもの。共用プライベートクラウドが他のユーザー企業とリソースを共有するかたちであるのに対し、専用プライベートクラウドはリソースを専有できる点が異なる。海外ではSmarterCloud Enterprise+の前版(1.3)で提供されていた。
マネージドプライベートクラウドは、CMSの新版(1.4)から加わった新モデルで、ユーザー企業サイトにIBMが所有する機器を設置し、IBMが運用を担当するものとなる。一般にプライベートクラウド(IaaS)がユーザー企業サイトでユーザー企業が所有する機器を設置しユーザー企業自ら運用するのに対し、マネージドプライベートクラウドは、IBMがプライベートクラウドの環境構築や運用を担う点が異なる。
日本IBM 執行役員 クラウド事業統括 小池裕幸氏
執行役員 クラウド事業統括 小池裕幸氏は、クラウドに対する最近のIBMの考え方として、IaaS環境だけでなくミドルウェアやアプリケーションも含めて、絶えず変化するビジネス環境に適応し、変革のスピードを上げていくことができる環境を“ダイナミッククラウド”というコンセプトで表現していると説明する。
変革のスピードアップのためには、IT部門だけでなく、ビジネスリーダーや開発者との連携が必須であり、3者がコラボレーションしながらビジネスを展開する“コンポーザブルビジネス”を展開していく時代に入っていると背景を説明した。
「開発をしながら運用するDevOpsもそうだが、ものを早く作るためにどういうテクノロジが必要かを考えながらやっていく時代になってきている。プログラムを開発するというよりSaaSを組み合わせて早く作るといったようにクラウドに求めるものも変わってきた。新サービスはこうした時代背景を踏まえたものだ」(小池氏)
マネージドプライベートクラウドの特徴としては、ユーザー企業のサイトに人を派遣せず、リモートからの自動運用ができることが挙げられる。機器の購入費用、人件費など不要になるため、プライベートクラウドを構築するよりもコストを削減できる。機器調達の時間やシステム構築基幹を短縮しサービスリリースを早めることもできる。
運用については、IBMのクラウドデータセンターで提供される運用サービスと同等という。セキュリティやネットワーク、性能の向上のほか、災害対策などにもオプションで対応する。データセンターは、中国、ポルトガルが加わり、世界13カ所で企業のグローバル展開を支援する体制だという。
サービス価格については、マネージドプライベートクラウド、共用プライベートクラウド、専用プライベートクラウドの3つは共通で、一部機能については値下げした。
SAPアプリケーションを用いた業務システムをPaaSとして提供する「IBM Cloud Managed Services for SAP Applications(CMS4SAP)」の機能を強化し、標準機能としてインメモリデータベース「SAP HANA」を提供できるようにした。
データウェアハウスとしてのHANAの利用のほか、ビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite」などと組み合わせた利用、高速処理エンジンとしての利用などのシナリオを用意しているという。所有しているHANAアプライアンスを“Bring Your Own Box(BYOB)”方式でIBMサイトに持ち込んで利用することもできる。
パブリックIaaSのSoftLayerで国内のパートナーエコシステムが拡大していること、スタートアップ向けに無償利用枠を提供、マーケティングを支援する「カタリスト・スタートアップ・プログラム」(Catalyst Startup Program)を国内で強化していくこと、クラウドビジネス拡大のためにIBM社内でクラウドエキスパート800人規模に拡充したことも紹介された。
SoftLayerパートナーは数千社規模で、国内では、ワークスアプリケーション、エルテックス、ブイキューブ、ビットアイル、ビープラッツが連携サービスなどを発表している。