垂直統合型データベースシステム「FUJITSU System HA Database Ready」
既報の通り、富士通は12月6日、サーバ、ストレージ、ネットワーク、OS、データベースをセットにした垂直統合型データベースシステム「FUJITSU System HA Database Ready」の販売を始めた。価格は6730万円で、2013年1月下旬から出荷する。
データベースにPostgreSQLを採用し、リソースを最大限に活かすためのチューニングが実施された状態で出荷するため、設置からデータベース利用まで1日という短期導入を実現する。富士通のノウハウまでセットとしたことで他の垂直統合型製品との差別化とする。
新製品は、富士通のIAサーバ、9テラバイトのストレージユニット、OSにRed Hat Enterprise Linux、そしてPostgreSQLをセットにした垂直統合型データベースシステムだ。さらに富士通が自社データベース「Symfoware」で培った技術と、最高のパフォーマンスを出すためのチューニングといったノウハウも組み合わせている。
谷村勝博氏
富士通 統合商品戦略本部 SVPの谷村勝博氏は、製品開発の背景について、「当社のユーザー会で調査したところ、企業は新規ICT投資と既存システム運用への投資比率が5対5であることが望ましいと思っているのに対し、現実には既存システムの運用と保守に7割のコストが使われ、新規投資は3割強に留まっている。特にオープン化の弊害でシステムの運用と保守に余分なコストがかかるという実態があり、この問題を解決するために富士通のノウハウを取り入れた垂直統合型プラットフォームを提供することとなった」と説明した。
同社の垂直統合製品は2003年に発売したITシステム基盤の構成を標準化した「TRIOLEテンプレート」に始まり、昨年には仮想化、プライベートクラウド向け統合基盤「Cloud Ready Blocks」を提供している。
遠藤和彦氏
「ハードウェアの価格性能比は大幅に向上しているが、それを最大限に引き出すシステムにするのが相当難しい。そこで新技術の価値を最大に引き出すよう、ソフトウェアでハードウェアの性能を最適化したものが垂直統合製品となる。来年はBI(ビジネスインテリジェンス)のような情報活用のための垂直統合製品も投入する計画で、お客様が購入後にすぐに使える製品としていく」(富士通 IAサーバー事業本部 本部長の遠藤一彦氏)
今回の製品に採用したデータベースソフトウェアは、多くのアプリケーションで利用されているオープンスタンダードなデータベース「PostgreSQL」。富士通では東京証券取引所に導入されている独自データベース「Symfoware」を推進してきたが、今回はそこで培ってきた高性能と高信頼性を実現する技術とノウハウだけを活用している。
垂直統合を指向する競合製品は大規模システムをターゲットとしたものが多いのに対し、大規模の下位から中規模システムをターゲット市場としている。
インメモリ技術でデータベース全体をPCIeSSDに搭載したことで、I/Oのボトルネックを解消。CPU性能をフル活用した結果、トランザクション性能20倍を実現したという。導入後にチューニングしなくても高性能、大量処理で安定した性能を実現するとしている。
ハードウェアの設定からソフトウェアのインストールに至るまで、福島県にある富士通アイソテックで行う。導入パターンに基づいて構築と運用を決めているため、導入後はネットワーク設定だけでデータベース利用が始められる。ほぼ1日での利用が可能だ。
運用の際に負担となるパッチ適用についても、オープンソースソフトウェアの場合、OSとソフトウェアごとにパッチ適用しなければならず、利用している業務をストップする必要があった。新製品ではOSとソフトウェアを含めた統合パッチを提供。導入されているサーバ2台を交互に停止させてパッチ適用する手順を組み込んでいることから、業務を止めることなくパッチを適用することができる。
データベース利用開始時から冗長構成で運用を開始し、ハードウェアが故障した場合にも業務継続ができるように、副サーバにリアルタイムにデータを複製。故障時には10秒で切り替えを行う。自動バックアップ設定によってワンクリックでのデータ復旧にも対応した。導入の際に冗長化の設計や検証などの作業を行う必要がなく、復旧にあたってもサポート技術者の支援を受けながら作業を行う必要がない。
新田将人氏
「オープンソースソフトであるPostgreSQLの情報については、PostgreSQL開発者コミュニティ、現在35者が会員となっている利用者コンソーシアムと連携することで、開発と運用ノウハウを共有するエコシステムを確立。バージョンアップ時点でも互換性を保証し、あまり連携されてこなかったC/COBOLといった過去資産との連携も保証する」(富士通 ミドルウェア事業本部 本部長の新田将人氏)
富士通では今後3年間で300システムの販売を目標としていく。
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