Oracle OpenWorld 2012

Oracle OpenWorld 2012:富士通の次世代サーバテクノロジーが注目を集める理由

冨田秀継 (編集部) 2012年10月03日 05時23分

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 米Oracleが開催中の年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2012」では、初日となる9月30日の基調講演のトップバッターを富士通が務めた。

 富士通はイベントスポンサーの中で最上位の「グローバルスポンサー」だ。通常、こうしたイベントのスポンサー枠はブロンズ、シルバー、ダイアモンドなどと続き、マーキーを最上位のスポンサーとする。Oracleは今回のカンファレンスで、同社との関係強化に並々ならぬ意欲を見せる富士通をグローバルスポンサーという最上位の枠を新設して迎えた。

 初日の基調講演に登壇したのは、富士通 執行役員 常務の豊木則行氏だ。豊木氏は、東日本大震災の復興支援策である「スマートシティイニシアティブ」の説明から始まり、農業や医療でのビッグデータ活用の取り組みへと話を進めた。そのあとで紹介したのが、講演の目玉とも言える「次世代サーバテクノロジー」だ。

 開発コード名「アテナ」は、28nmプロセスで製造されるプロセッサ「SPARC64 X」のことだ。1CPUあたり16コアを搭載、1コアあたり2スレッドの処理性能を持ち、これを最大64プロセッサ、2048スレッドまで拡張できる。

 SPARC64 Xをプロセッサとして採用し、高い性能と信頼性を確保したサーバが「次世代サーバテクノロジー」である。富士通社内では当初、アテナという呼び名が示す範囲はSPARC64 Xに限定されていたが、技術開発が進むにつれて、今では次世代サーバテクノロジー全体を示したり、開発プロジェクト全体を指すこともあるという。本稿では、プロセッサについては「SPARC64 X」、プロセッサを含むサーバプラットフォーム全体を「次世代サーバテクノロジー」として論を進めたい。

SPARC64 Xのウェハ SPARC64 Xのウェハ
※クリックで拡大画像を表示

 SPARC64 Xにはソフトウェアでの処理をプロセッサが実行する機能「Software on Chip」が搭載される。具体的には、浮動小数点数演算の標準規格とOracle NUMBERに対応する「Database Accelerator Engines」、スーパーコンピュータ「京」の技術(SIMD命令など)を適用する「HPC-ACE」、CPUの命令レベルで高度な暗号化に対応する「Encryption/Decryption Engines」といった機能を提供する。

 Software on Chipは、ハードウェアの高い性能を活用してソフトウェアの処理性能を引き上げようとする試みだ。富士通でエンジニアリングを統括する執行役員の野田敬人氏は、「簡単に言うと、ソフトウェアをアシストするハードとして稼働する」と表現している。

 この機構そのものは富士通が独自に開発したものだが、Oracle NUMBERの処理にプロセッサレベルで対応していることからも分かるとおり、実装にあたってはOracleと協議していた様子が窺える。

 また、ラックは「Building Block(ビルディングブロック)」を基本単位に構成する。ラック1台あたり8台のビルディングブロックを搭載、最大ではラック2台まで拡張できるためビルディングブロックも16台まで拡張できる。ビルディングブロックには、1台あたり最大4基のCPU、2TBのメモリを搭載可能。1CPUあたり最大512GBのメモリを搭載できるため、4CPUを搭載した構成では2TB、16台の最大構成では32TBまで拡張できる。

 この構成は「Building Block Architecture」と呼ばれる。さらに、ビルディングブロックは最大14.5Gbpsを実現する富士通のインターコネクトで接続される。

  • プロトタイプの背面。5段目と6段目にインターコネクトのインターフェースが見える

  • インターコネクトの最大速度14.5GbpsはInfiniBandの転送速度を凌駕している

 冷却面では空気冷却と液体冷却を組み合わせた「Liquid Loop Cooling(リキッド・ループ・クーリング)」という新技術を採用した。富士通は、冷媒を用いてサーバ内の冷却効率の良い場所に熱を移動させ、ラジエターに風を当て冷却を行う方式と説明。豊木氏は、リキッド・ループ・クーリングは空冷装置との簡単な置き換えが可能な機構だと説明している。

  • ヒートシンク(金色の板)と2本の管で接続している黒いポンプを使って液体冷却

  • 頭上からプロトタイプを見る。空気冷却は画像左下のファンが担う

 豊木氏は基調講演の途中で、米OracleのSenior Vice President, Database Server TechnologiesのAndrew Mendelsohn氏を紹介。Mendelsohn氏はSoftware on Chipの働きを「データベースのプロセスをチップに出していく」と表現した。

 豊木氏も、Oracleとの密接な協業をアピールした上で、次世代サーバテクノロジーの上にOracleのOS「Solaris」とデータベース「Oracle Database」を載せ、ビッグデータ解析のプラットフォームとしたい考えを示した。

 豊木氏の講演終了後、米Oracleの最高経営責任者(CEO)であるLarry Ellison氏が登場。講演の冒頭で「Oracleと富士通は次世代SPARC(サーバテクノロジー)を開発している。約束しよう。来年の今頃までに、他のプロセッサ以上の速度でOracle DatabaseをSPARC上で走らせてみせる」と強い決意を示してみせた。

 富士通 代表取締役副社長の佐相秀幸氏は、Oracle OpenWorld 2012の会場でグループインタビューに応え、次世代サーバテクノロジーが製品として結実した暁には、国内だけでなくグローバルで販売する意向を示した。商用化は「来年のなるべく早い時期」(佐相氏)としている。

 なお、基調講演では富士通とOracleの関係を示したスライドが映し出された。

富士通とオラクルの関係を示したスライド 富士通とオラクルの関係を示したスライド
※クリックで拡大画像を表示

 このスライドは、富士通の側に「ハードウェア開発の能力」「システムインテグレーションのノウハウ」、Oracle側に「エンタープライズ・データベース・テクノロジー」「ビジネスインテリジェンスのノウハウ」とある。文脈としては、このスライドの直後から次世代サーバテクノロジーの解説が始まる。一方、両社の情報システムへのアプローチは、富士通が業務アプリケーションから、Oracleがインフラに近い部分から入るケースが多いとされる。

 このギャップを問うZDNet Japanからの質問について、佐相副社長は「今のOracleと富士通の関係性は、ああいう(スライドの)ように見えていて、実際それに近い。しかし、解は一つだけではない」とコメント。その上でこのギャップを「埋めてみせますよ」と述べ、次世代サーバテクノロジーへの期待を高めて見せた。

 次世代サーバテクノロジーが注目される理由は、高いハードウェア性能もさることながら、そのビジネスインパクトもあるだろう。グローバルで販売されれば、富士通の最も強力なパートナーであるOracleが、最強の競合として立ちはだかることも考えられる。テクノロジーはもちろん、両社のパートナーシップの行方についても引き続き注目していきたい。

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