「メイドインジャパン、日本発の製品が今後も世界一であり続けるために、“ものづくり革新隊”の活動を通じて貢献していきたい」
(富士通 花田吉彦 執行役員常務)
富士通は5月8日、日本のものづくりを強化するため、スーパーコンピュータ「京」や各種サーバ、パソコン、スマートフォンなどの製造で培った同社グループのノウハウ、ツール、人材を結集し、製造業の顧客企業に外販することで新たなビジネス価値を提供するコンセプト「ものづくり革新隊」を確立し、これに基づくサービスを展開すると発表した。
花田氏の発言は、その発表会見で、産業ソリューションビジネスグループ長として同事業を統括する責任者としての意気込みを示したものである。
富士通 花田吉彦 執行役員常務
「ものづくり革新隊」の具体的なサービスとしては、現場を熟知したベテラン人材による「ものづくりエキスパートサービス」、現場で使い込んだICTソリューションや生産設備などの「ものづくりツール」、高度な専門業務の受託や工場共通運用業務のBPOなどの「ものづくり受託サービス」がある。これらを2012年10月より順次提供していくという。
富士通ではこうした活動によって、ものづくりの全領域をICTでつなぐとともに、「ものを作らないものづくり(デジタルモックアップ)」「フレキシブル生産(標準化・自動化)」「ものづくりモニタリング」などの先端ICT技術を駆使。これらによって、開発期間の短縮や生産性の追求、グローバルな開発・生産拠点を活用した柔軟性の高い開発・生産プロセスを確立し、顧客企業のものづくり革新を支援するとしている。
会見の質疑応答では、こんなやりとりもあった。「富士通はこれまでICTのアウトソーシング、そしてICTを活用したBPOも展開してきているが、今回の取り組みはEMS(電子機器の受託生産サービス)も目指そうというものか」との質問に対し、花田氏はこう答えた。
「同じ製造業として、そうしたサービスを展開する方向も考えていく必要があるだろう。とはいえ、最も大事なのは、そうした活動によって、いかに顧客企業のビジネス価値を高めることができるか、にある。今回のものづくり革新隊の活動は、まさにその点を主眼としている」
会見後、そうした質疑応答をじっと聞いていたベテラン記者が筆者の耳元でこうつぶやいた。
「この活動が奏功するとすれば、顧客企業との合弁スタイルが現実的ではないか。リスクを分かち合う形でないと、顧客企業が自らの大事なものづくりノウハウを外に出すことはないだろう。むしろ富士通の狙いは、ものづくりで合弁を増やしていくことにあるのかもしれない」
果たして図星か、それとも深読みし過ぎか。筆者には非常に説得力のあるつぶやきに聞こえた。