松岡功の「今週の明言」

レノボ・ジャパン社長が説く「これまでのPCと『AI PC』の違い」とは

松岡功

2024-12-06 10:50

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、レノボ・ジャパン 代表取締役社長の檜山太郎氏と、日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 Data and AI事業部 事業部長の千田美帆子氏の「明言」を紹介する。

「PCはAI搭載のコンピューティングがパーソナル化していくことを意味する」
(レノボ・ジャパン 代表取締役社長の檜山太郎氏)

レノボ・ジャパン 代表取締役社長の檜山太郎氏
レノボ・ジャパン 代表取締役社長の檜山太郎氏

 Lenovoグループの日本法人であるレノボ・ジャパンの檜山氏は、同社が先頃開催したプライベートイベント「Lenovo Tech World Japan」の基調講演で、AIを搭載したこれからのPCの在りようについて上記のように語った。この発言の意図について同氏は、「PCはこれまで文字通りパーソナルなコンピューティングを提供するものだった。それがAI時代になれば、AI搭載のコンピューティングがパーソナル化していくことになる。つまり、人間にとって逆の意味を持ち合わせるものにもなる」と説明した。「パーソナルなコンピューティング」がAIによって「コンピューティングがパーソナル」になっていくわけだ。この影響は非常に大きいと感じたので、明言として取り上げた(図1)。

図1:PCの意味が変わる(出典:「Lenovo Tech World Japan」基調講演の説明資料)
図1:PCの意味が変わる(出典:「Lenovo Tech World Japan」基調講演の説明資料)

 Lenovoはかねて来るべきAI時代に向けて「Smarter AI for All」というビジョンを掲げ、「お客さま全てにAIの恩恵をもたらすために注力している」(檜山氏)という。今回のイベントはそのための同社の取り組みを紹介したものだが、その内容は発表資料をご覧いただくとして、ここでは檜山氏の冒頭の発言に関連して、同氏が基調講演で語った印象深かった話を取り上げたい。

 それは、同氏が「“For All”の実現に向けては注意していかなければいけないことがある。それは、AIを搭載したPCはこれまでのようにすぐに使えるものではなく、段階を踏むことによってうまく使えるようになっていくものだからだ」と、図2を示しながら話した「AI活用に向けた5つのレベル」だ。その内容は、AI活用の典型的な例である車の自動運転になぞらえた形となっている。

図2:車の自動運転になぞらえた「AI活用に向けた5つのレベル」(出典:「Lenovo Tech World Japan」基調講演の説明資料)
図2:車の自動運転になぞらえた「AI活用に向けた5つのレベル」(出典:「Lenovo Tech World Japan」基調講演の説明資料)

 レベル1は運転支援で、これは既に多くの車に装備されている。そこから特定条件の下で自動運転できるようになるのがレベル2、それを高機能化したのがレベル3、そして何かあった時のために人間が乗車して自動運転を行えるようにしたのがレベル4、最終的に人間が乗車しない状態で完全な自動運転を実現するのがレベル5だ。

 檜山氏はこう説明した上で、次のように述べた。

 「車の自動運転は既に一部で実現しているが、まだまだトライアルの段階で、大半のベンダーは5つのレベルを着実に積み上げながら完全な自動運転を目指している。なぜ、こうした段階を着実に踏むのか。それは、完全な自動運転を実現するためには自動運転そのものの技術だけでなく、ベンダーとしてのしっかりとした供給体制、利用者にとって必要なことの準備、交通網への対応、法的な整備、環境への対応など、さまざまな領域と共にそれら全体の整合性における課題をクリアしていかないと、利用者および社会全体の信用を得られないからだ。こうした段階を踏むことについては、AIも同じだと考えている。利用者の信用を得られるか、安心して使っていただけるか。そのために、われわれベンダーも段階を踏んで着実な努力を積み重ねていく必要があると考えている」

 冒頭の発言にあるように、パーソナルなコンピューティングを使うだけでなく、AI搭載のコンピューティングがパーソナル化していけば、「人間とPCの関係性」はどうなっていくのか。少なくともそこに「信用」は不可欠だ。檜山氏が基調講演の早い段階でこの話に時間を割いたことに、PCベンダーとしてのLenovoの真摯(しんし)な姿勢を感じた。

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