エンタープライズモバイルの時代

エンタープライズモバイルは企業を「再設計」する

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-08-04 07:30

 「エンタープライズモバイルの時代」と題して、2013年9月から連載を続けてきた本稿は、今回が最終回となる。これまでの総まとめをしながら、エンタープライズモバイルの将来と今後の可能性について検討していきたい。

コンピューティングパワーの広がりはこれからが本題

 これまでに述べてきたように、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット)は、年々出荷台数を伸ばし、IDCの予測では2015年にはモバイルPCの出荷台数をタブレットが抜く予測となっているほどだ。


タブレットおよびPCの出荷台数予測(世界)

 これは、スマートデバイスがこれまで、コンピューティングパワーの恩恵を受けることができなかった製造ラインや建設、接客の現場など、いわゆるフィールドワークと言われる分野への導入が本格化し、非常に大きな影響を与えているものと想定されているからだ。


タブレットを利用している社員の職種と今後の意向

 また、ユーザー自身がスマートフォンやタブレットを自由に使いこなし、その利便性を体感してしまったことにより起こる「ITのコンシューマライゼーション(ITの民主化)」は、シャドーITを含むBYOD(Bring Your Own Device:私物端末の業務利用)への欲求をユーザーにもたらし、逆戻りできないところまできていると言っても過言ではない。

 今後、IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)などのセンサ技術やウェアラブルデバイスなどの登場により、フィールドワークの現場ではさらに、ICT化が加速することは容易に想定することができる。

 2020~2030年頃には、仕事の多くは、エージェントと呼ばれる機械たちと協働するような時代となり、コンピューティングパワーの恩恵を無意識のうちに利用している時代がくるのではないかと筆者自身は予測している。

何のために、そして、誰のためにスマートデバイスを導入するのか

 さて、そのような素晴らしいテクノロジを「何のため」に利用するのか。それを考える重要性についても触れてきた。それは「スマートデバイス導入における落とし穴--上」 で解説したグランドデザインを設計することの重要さである。スマートデバイスの導入意欲は、決して低くはないと理解しているが、残念ながら、導入した企業の満足度は、半分程度に留まっている。

 逆の解釈をすると、半分の企業は、導入効果を得られていないと感じていると理解するのが、普通であろう。しかし、図に示すように、もう半分の企業のうち「どちらともいえない」と「わからない」をあわせると約6~7割は、導入の効果があったかどうかすら、把握できていないのが実態である。いわゆる「とりあえず導入」である。


タブレット導入に関する満足度

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]