高度なサービスが提供される携帯電話、PASMOでも話題の非接触型IC、世界のトップともいわれる製造業……、これら全てに組み込みビジネスの機会が存在する。日本は極度に発達した組み込み天国だ。中国や韓国でも規模や得意分野こそ違えど、似たような状況ができてきている。
そうした日本およびアジアパシフィック(APAC)の組み込み市場にオラクルが力を入れ始めた。同社では約2年前、日本とAPACにおいて、同社として初めてとなる組み込みにフォーカスしたビジネスユニットを作っている。
Oracle Asia Pacificの Vice President、Mark Barton氏
今回、このユニットのトップであるOracle Asia Pacific Embedded Business UnitのVice President, Mark Barton氏と国内におけるビジネスを担当する日本オラクル システム製品統括本部 Embedded ビジネス推進本部 部長の竹爪慎治氏に、同社の組み込み分野への取り組みについて聞いた。
現在のところ、オラクルの組み込み分野における取り組みはデータベースが中心となっている。Barton氏によれば、ここでのオラクルの強みは、ほかの分野と同じく、プラットフォームによる標準化の推進だとする。
組み込みプロセッサの性能は向上し、組み込み機器も複雑な情報を扱うことが可能になっている。そして、3G携帯電話やBluetoothの普及より、組み込み機器と、オラクルが従来手がけてきたデータベースやミドルウェアをつなぐための環境も整ってきた。
こうしたなかでオラクルが提供する価値は、次の3つ。
- 開発の簡略化
- プラットフォームによる標準化
- グローバルな支援体制
Barton氏は、オラクルにおける組み込み機器の定義を「チップとソフトウェアが一緒になってさまざまなユニットに組み込まれているもの。ユーザーの目から見ると、ソフトウェアが既に組み込まれていて、それに対し、ユーザーが何かの変更を加えるということがないもの」とする。
同社ではこのターゲットに対して、ハイトランザクションシステム向けインメモリーデータベース製品のTimesTenや組み込み向けRDBMSのOracle Database Lite、Berkley DBをラインナップしている。
まず、「開発の簡略化」では、ファイルシステムをデータベースで置き換えていくことで、従来ならコードを書いていたデータアクセスの部分をオラクルのパッケージで置き換える。
「携帯電話は機種によってさまざまなファイルシステムを使用している。これをデータベースにすれば、機種が違ってもファイルシステムの違いを意識することなく、同じコードでデータにアクセス可能となる」と、Barton氏は携帯電話を例に挙げながら説明する。この例は実際に海外の顧客であったもので、携帯電話の高機能化に伴い、こうした要望が増えてきているという。
竹爪氏は別の例を挙げ、「カーナビゲーションシステムの地図コンテンツをデータベースに格納しておけば、最新の地図に更新する際、全データを置き換えるのではなく一部だけを置き換えるということが容易になる」とする。
現在、音楽のメタデータのような付加機能をデータベースへ格納することが進んでいる一方で、地図のようなコアとなるコンテンツはまだまだデータベースへの移行が進んでいない。しかし、同氏は多くの引き合いがあるとし、コアコンテンツの移行も徐々に進むだろうと予測する。
次にプラットフォームによる標準化。いかに高機能な組み込み機器といえども、フロントエンドのクライアントにデータをため込んでおくだけではあまり意味がない。組み込み機器の集める情報を分析し、管理し、活用するためのバックエンドを構築し、フロントエンドのクライアントとバックエンドのエンタープライズシステムを連携させる必要がある。このためのプラットフォームをオラクルが提供しようというものだ。
ここは同社が総合ビジネスソフトウェアベンダーであることが生きるところだろう。特に国内では3Gが急速に普及しており、広帯域を生かした付加価値の高いサービスを提供しやすい。この状況でもプラットフォームが生きてくる。
同社では、組み込みデータベースとエンタープライズシステムのデータ同期を、プラットフォームとして用意している。Barton氏はこのプラットフォームを利用するメリットとして「認定されたプラットフォームが存在すれば、パートナーにとって非常に大きなメリットが生まれる。リスクやコストの低減、市場へ送り出すまでの時間短縮などだ」と説明する。
同期の手段として、データベース同士が直接通信する基本的な方法から、将来的にはSOA(サービス指向アーキテクチャ)ベースの通信方法まで幅広く用意されていることもメリットとなるだろう。デバイスとアプリケーション、サービスまでをひとつのサービスプロバイダーが用意する場合は前者で問題ないが、さまざまなプロバイダーが参加すればSOAのような通信基盤が必要とされるだろう。
2007年5月に米国で開催された「2007 JavaOne Conference」では、EDA(Event Driven Architecture)への対応をFusion Middlewareに盛り込んでいくことが明らかにされている。竹爪氏によれば、国内において、すでにRFIDを活用し、センサーの感知を起点としたBPELプロセスの起動といったEDAへの取り組みを進めているとのことだ。
また、国内ではSuicaやPasmoといった非接触ICカードの普及も特徴的だ。例えばこれらを使った会員制私書箱サービス「えきあど」では、Oracle Database LiteからOracle Databaseまでさまざまな製品が使われており、すでに東京駅において利用可能という。
最後にグローバルな支援体制では、「組み込み分野における日本のサービスは先進的で、国内のサービスをグローバルでも展開可能。パートナーにとっては非常に魅力的な分野だと考える」とBarton氏。日本やAPACから世界への展開をサポート可能なオラクルの体制がパートナーのビジネスチャンスをより大きくできるということだ。
今後の方向性としては、まずフロントエンドのクライアント自体にデータを処理するなど、ある程度の機能が盛り込まれていくだろう。たとえば、セキュリティゲートでRFIDを使った入退室を記録するなどする際に、必要なデータのみをバックエンドのシステムに送り、不要なデータは廃棄するといった取り組みも行っている。
Barton氏は、こうしたオラクルの取り組みを通じて、「最終的にはエンドユーザーに支持されるサービスの選択肢が広がり、よりセキュアになり、また安価なものになるだろう」と話している。
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