5月16日から19日までの4日間、米国サンフランシスコにおいてSun Microsystems主催の「2006 JavaOne Conference」が開催されている。Javaテクノロジ開発者を対象としたJavaOneの今回の目玉は、Webサービス開発・導入ツールのJava Enterprise Edition 5.0のリリースだ。2005年より、次世代バージョンの開発状況はすでに開発コミュニティなどから発表はされていたものの、今回のカンファレンスでその全貌が明らかになった。
今回のカンファレンスにおけるJavaテクノロジトレンドを総括すると、第1にWeb 2.0時代の到来を意識して、開発容易性(Ease of Development、EoD)の向上や開発のスピードアップ、低コスト化を追及したことがある。第2には、企業システムの有効な開発手法として期待されているSOA(Service Oriented Architecture)への対応を明確に打ち出し、あらゆるSOA技術適応へのサポートをアピールしていること、そして第3は、世界におけるオープン化の流れに即し、Javaユーザーの更なる拡大を図るべく、オープンソース計画が提案されたことだ。特に、Javaのオープンソース化への取組みの表明については再三強調されていた。オープニングセッションでは、Sun MicrosystemsのCEOに就任したばかりのJonathan Schwartz氏と共に、Motorola、JBoss、BEA Systems、Oracle、IBM、Red Hatなどの代表者も壇上に登り、Java EE 5.0へのサポートを明らかにした。Javaプラットフォームが、より互換性を実現するものとしての期待が伺える。
第1のEoDを実現するために、Java EE 5.0ではいくつもの新しいAPIが用意され、さまざまなセッションにてそのAPIの数々が紹介された。この動きを促進しているのが、昨年来話題のWeb 2.0である。Web 2.0時代では、コンテンツの利用側と提供側の境目があいまいになっており、SunのSchwartz氏は「Participation Age(参加の時代)の到来」と呼んだ。誰でも容易に参加できるようにするには、Javaの開発・導入ツールとしてもEoDを意識せざるを得なくなり、APIの充実につながったのだ。一方、ツールが増えることは複雑化を意味するため、取り扱いやすさを実現するために注釈を付与したアノテーション化も進んだ。
第2のSOA対応としては、基盤技術の充実が挙げられる。その一例としてSunでは、「Sun Java Composite Application Platform Suite」(Sun Java CAPS)をはじめとして、「Sun Java Studio Creator」、「NetBeans Enterprise Pack」、「Sun Java System Portal Server」などを用意している。現代の企業では、ビジネスの変化のスピードは増大し、更なる開発のスピードアップが要請される。更にシステムのメンテナンスも含めた生涯コスト(TCO)低減のニーズが高まっているため、ゼロから新規に開発していくのではなく、既存のシステムリソースを有効活用し、企業内のシステム同士を統合する方策が期待されている。それにはXMLベースのWebサービスが利用される。これはSOAPで接続されるが、SunはSun Java CAPSで広範囲に、セキュアで、スケーラブルなインテグレーションを実現している。
第3のオープン化については、SOAを支える技術の中でいくつかの積極的なオープンソース化計画が発表された。Sunはこれまでオープンソース化に積極的ではなかったものの、時代の要請にあわせ、より積極的にJava関連でのオープンプロジェクトを増やした。ジェネラルセッションや個別テクノロジーセッションでも、オープンソース化における一般個人の参加を要請していた。
今回Sunがオープンソース化を発表したのは、Sun Java Studio Creator、Sun Java System Portal Server、Sun Java CAPSのBusiness Process Execution Language(BPEL)エンジン、NetBeans Enterprise Pack、Java Message System(JMS)ベースのメッセージキュー、Web Services Interoperability Technology(WSIT)だ。
WSITは、Microsoftの提唱するWebサービスMicrosoft .NETとJavaとの相互運用性を目指したProject Tangoで開発された技術である。SunはMicrosoftとの共同プロジェクトを主導的に進め、成果をWSITにまとめた。WSITでは、セキュリティ、メッセージング、サービス品質、メタデータサポートの各分野に重点を置き、Javaテクノロジと.NETフレームワークのWebサービス相互運用性を推進している。さまざまなベンダーでSOAの取組みが研究されているが、WSITは互換性を実現した具体的な成果として高く評価されている。
今回のJavaOneでは、Sun MicrosystemsのエンジニアでProject TangoのリーダーであるArun Gupta氏と、MicrosoftのプロジェクトマネージャーKirill Gavrylyuk氏の2名がテクノロジセッションを持ち、プロジェクトへの取り組みを解説していた。
セッションでは、.NETで構築されたシステムと、Java EE 5.0で構築されたWebサービスをリンクしたものが紹介された。具体的な事例としては、自動車ディーラーの持つ.NETの卸売りシステムを、インターネット販売するWebサービス(これも、同じくオープンプロジェクトであるGlassFishで構築)と結合させた事例を示していた。両システムは、STS(Secure Token Service)と呼ばれるID管理システムによって、安全な環境が保たれている。
このほかにも、Web 2.0やSOA、オープン化を実現する技術や事例がさまざまなセッションで紹介されていた。