2006年にハーバードビジネススクール准教授のAndrew McAfee氏によって提唱されて以降、大きなムーブメントとなったEnterprise 2.0は、いまや技術面だけではなく、企業マネジメントの分野においても最も大きな関心事のひとつとなっている。
4月17日に東京で開催された「Enterprise2.0 SUMMIT 2008 TOKYO」では、Enterprise 2.0採用による企業側のメリットや、経営者はその効果をどう判断したらよいかといった疑問に対して、提唱者であるMcAfee氏自身がビデオメッセージで答えるセッションが設けられた。
ビデオ出演ではあるものの、日本で開催されるこうしたイベントに、McAfee氏が直接メッセージを伝えることは非常に珍しい。今回のイベントでは、Traction Software社長のGregory Lloyd氏がインタビュアーとなり、Enterprise 2.0が企業に与えた影響や今後の展望などについて言及した。
ソーシャルソフトウェアは新しいアプローチを実現する
「私がEnterprise 2.0を提唱する上で重要だと思っていたのは、Enterprise 2.0についての明確な定義を行うことと、その定義について技術者だけではなく企業経営者にも関心を持ってもらうことだった」とMcAfee氏は言う。その定義によれば、Enterprise 2.0とは、企業によって創発される新しいソーシャルソフトウェアのプラットフォームであり、これからのビジネスを推進する重要な技術の総称である。
「ソーシャルソフトウェア」とは、社会学者のClay Shirky氏が数年前に提唱した言葉で、急進的な問題に対応する1対1あるいは1対n、n対nのコミュニケーションを実現し、グループの相互作用をサポートするソフトウェアと定義される。
McAfee氏が言うソーシャルソフトウェアプラットフォームは、コンピュータを介したデジタルな環境で、人々が集まり、相互に交流し合うことでオンラインコミュニティの形成を可能にする基盤を意味する。その中では、特にルールが決められているわけでも、誰かが先導しているわけでもない。自分たちの好きなように交流し、形の決まっていない極めて自由で自発的な環境としている。それが使われていく中で機能性が生まれ、検索や情報収集がしやすく、集合知が自然に蓄積される豊かで充実した構造が構成されるようになるのだという。