Googleは米国時間2月9日、Gmailで利用可能な新たなソーシャルツールとして「Google Buzz」(以降、Buzz)を発表した。このツールは「Twitterキラー」となるという声もあるが、そういった声はありきたりに過ぎるというものだろう。実際のところ、エンタープライズの視点から眺めた場合、BuzzはMicrosoftのSharePointという、より大きなものをターゲットにしているのである。
もちろん、Googleの最初の目的はTwitterに打ち勝つことであるはずだ。BuzzによってGmailにソーシャル機能が追加され、連絡先に登録している人々をフォローすることが可能になる。また、写真や動画、位置情報などを共有することもできるようになる。要するに、140文字という字数制限を持たないBuzzは、ソーシャルツールにおけるTwitterの座、そしてTwitterのすべてのユーザーを奪い取る可能性を持っているわけだ。
デモンストレーションにおいてGoogle Mapsとの統合や、Buzzを用いてホームページやAndroid端末との間を行き来する様子についての説明が行われた後、Googleの製品管理担当バイスプレジデントであるBradley Horowitz氏は以下のように述べた。
われわれはBuzzをエンタープライズ向けの製品としてもアピールしていきたいと考えている。Google社内の業務にBuzzを試用したところ、社内のコミュニケーション方法に変革がもたらされた。
またHorowitz氏は、Googleのサービスを素晴らしいかたちで統合するという「途方もないチャンス」に恵まれているとも述べている。なお、Google Enterpriseブログ(英文)によると、Buzzは数カ月後、企業や学校に対してGoogle Appsとともに提供される予定だという。
ではここで、エンタープライズの視点から、Googleが統合しようとしているものに目を向けてみよう。
まず、Google AppsおよびGoogleドキュメントからだ。Googleの大きな売り文句は、Gmailを利用することにより、Microsoft Exchangeにかかるコストを削減できるというものである。最高情報責任者(CIO)たちは、できるならば電子メールの管理にかかわりたくないと思っているため、こういった売り文句に弱いというわけである。
エンタープライズにとってGoogle AppsとGoogleドキュメントは、今のところ全社を挙げて導入するというレベルに達していないものの、Googleの宣伝文句は、無償の(あるいは無償に近い価格で)オフィススイートを市場に送り出しているIBMといった企業のそれと同じである。彼らの主張は、パワーユーザーにのみMicrosoft Officeを使わせ、その他の従業員には安価なソフトウェアを使わせておけばよいというものである(大半の従業員は「一般的な」ワープロ作業や、プレゼンテーション作成作業、表計算作業を行っているだけである)。
要するにGoogleは、ExchangeやOutlook、Officeの代替となる製品によって、Microsoftが押さえている企業市場の足がかりをつかもうとしているわけである。
しかし、Googleは実際のところ、SharePointというさらに大きなターゲットを見据えているのだ(SharePoint関連の英文記事はこのページにまとめられている)。SharePointは多くの点で、OfficeとExchangeの組み合わせを理想的なものにする製品である。つまり、ここでの鍵はコラボレーションというわけだ。GoogleがSharePointの代替となる製品を市場に送り込んでくるという噂はあったが、その候補は「Google Wave」か「Googleサイト」だとされていた。ここに至り、ロードマップが垣間見えてきたということになる。
Buzzの戦略は、既に発表されているGoogle AppsやGoogleドキュメントのそれとよく似ている。まず最初に手の届きやすい中小企業をターゲットにするわけである。このため、Googleが現在Exchangeに対して行っているような、ROI(投資利益率)に焦点を当てた広告戦略を実施するようになるまで、大企業は当面SharePointを使い続けることになるだろう。
Google Buzzが企業での使用に耐えられる製品になった暁には、その影響は多大なものとなる可能性がある。企業は、Buzzを採用することで、SharePointのライセンス料を削減するという選択肢を手にすることも考えられるわけだ。すべての鍵はコラボレーションにある。
今のところ、BuzzをSharePointキラーと呼ぶには時期早尚であるものの、これによってGoogleのエンタープライズ向けの戦略や戦術が姿を現してきたと言えるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ