NECは3月3日、全国の防災・地域情報を収集し、マスメディアや公共機関向けに配信する情報基盤「安心・安全公共コモンズ」の実証実験システムを開発したと発表した。同コモンズは、総務省の平成21年度地域情報プラットフォーム推進事業・防災分野(多様なメディアによる住民への災害情報等の提供)について同社が委託を受け、事業の一環として開発したもの。
安心・安全公共コモンズは、全国の地方自治体や交通機関、ライフライン事業者から防災情報などを収集し、放送事業者、新聞社、学校・公共施設に対して配信するしくみ。災害時だけではなく、気象情報や河川の水位情報など、地域住民が日常的に必要な情報を流通させる基盤としても活用できるという。
このシステムは基本的に、「コモンズノード」と「コモンズツール」の2つの要素で構成される。コモンズノードは、全国の防災情報を蓄積し、マスメディアや公共機関に配信するシステムで、これらの防災情報の入力、閲覧を行うためのソフトウェアが、コモンズツールとなる。
コモンズノードは、収集した情報を配信先に合わせて最適なデータ形式に自動変換する機能を備えており、たとえば、テレビ局向けには、デジタル放送向けのXMLフォーマットであるTVCML(TeleVision Common Markup Language)で、新聞社向けには、XMLベースの緊急事態データ交換言語のEDXL(Emergency Data Exchange Language)で配信される。これにより、地上波デジタル放送、インターネット、携帯電話メールなど、幅広い手段を通じて地域住民へ情報を提供することが可能という。
実証実験には、自治体からは、兵庫県、新潟県、岐阜県、滋賀県、三重県、京都府、奈良県、大阪府などが、報道機関からは、NHK、サンテレビジョン、朝日放送、関西テレビ放送、讀賣テレビ放送、テレビ大阪、神戸新聞社などが、公共事業者としてはNTTドコモが参加する。これらの自治体が情報入力、閲覧などを実行し、報道機関はTVCML配信、ツールによる情報入手試験、データ放送、街頭に設置した大型ビジョンによる情報表示などを行うという。
NECでは「地方自治体は、このシステムにより、ざまざまなメディアに対して効率的に情報を提供し、より多くの地域住民に情報を伝達することや、他地域の災害状況などを即時に把握することが可能になるため、大規模災害発生時に、他府県などの防災関係者とのコミュニケーションツールとして活用することもできる。また、マスメディアや公共機関は、全国の防災情報などを一括して最適なデータ形式で取得でき、情報収集のためのシステム開発コスト削減につながる」としている。