Risk Indexに見る東京のリスクの高さ
東京は、世界の大都市の中で最も“リスク”が高い――。これは、独の再保険大手Munich Reが2003年に発表した「Risk Index」という指標で明らかになった結果だ。この指標は、保険業界向けに世界の大都市圏での自然災害を総合的に分析するために作成されたものだ。
具体的には、都市の人口と世界的な重要性をベースに世界50都市での自然災害が起きるリスクとそれに伴う損害のリスクを数値化して、都市間で比較している。その50都市の中で最も高いのが東京・横浜であり、そのRisk Indexは710となっている。続く2位が米サンフランシスコ湾で同指標は167、3位は米ロサンゼルスで同指標が100、4位にあるのが大阪・神戸・京都で同指標92、5位は米マイアミで同指標は45だ(同調査は日本語版が公開されている=PDF形式)。
このランキングを見ると、東京・横浜は米サンフランシスコ湾よりも4倍以上リスクが高い都市ということになる。Risk Indexは、リスクにさらされる資産価値、自然災害が起きうるリスク、自然災害が起きた際にどれだけの被害を受けうるのかという脆弱性という三つの観点で比較される。東京・横浜が最もリスクが高いとされるのは、東京・横浜を含む日本の首都圏は資産価値が集中する世界有数の大都市でありながら、自然災害が起きる可能性が高く、その災害に対して脆弱であるという分析からだ。
Risk Indexはあくまでも保険業界向けの指標だが、この指標を「ビジネス拠点として東京は“危険”な都市」と読み取ることもできなくはない。同指標の発表以降、日本の産業界では、自然災害に対してどう取り組めばいいのかという議論が交わされるようになっている。
東京・横浜がRisk Indexの1位となったのは、日本が地震大国であるという事実を大きく反映している、というのは誰の目にも明らかだろう。地震大国である日本では、過去10年間を振り返っても大きな被害をもたらした地震が数多く起きている。また今後、発生の可能性がかなり高いとされる直下型地震によって、首都圏は甚大な被害を被るとも予想されている。
防災から減災へ
そうした中で日本国内では、地震をはじめとする自然災害に対する考え方が大きく変わりつつある。以前であれば主に「災害を未然に防ごう」という意識でさまざまな施策や取り組みがなされていた。“防災”である。国家レベルでの地震予知に対する取り組みも、防災意識の表れと言うことができるだろう。
もちろん、現在でも防災の意識での施策や取り組みは続けられている。しかし、防災と同時に現在では“減災”という考え方も根付きつつある。減災とは「自然災害の発生は防ぐことができないので、むしろ、いざ災害が発生したときに被る被害をできる限り最小限に食い止めよう」という考え方だ。
被害そのものを防ぐのではなく、被害をできるだけ最小限に食い止めようという減災。企業の情報システムにおける災害復旧(Disaster Recovery:DR)対策も、そうした減災の意識も同時にもって取り組んだ方が現実的な解ではないだろうか。
被害を未然に防ぐという防災“だけ”の意識で取り組もうとすると、ハードウェアやソフトウェア、サーバルームやデータセンター、データ、人材…。さまざまな分野でさまざまな対策を講じないといけないと考えてしまい、どこから手を付けるべきなのか、皆目見当が付かなくなってしまう。
もちろん、ある特定のハードやアプリケーション、データについては被害を未然に防ぐための手段を講じるべきだ。たとえば生産管理や在庫管理、財務などの基幹系システムがそうだろう。しかし、もし情報系について基幹系ほどの対策を打てないのならば、それほどコストのかからない対策をせざるを得ない。あくまでも、情報システムを含めた企業全体としてメリハリのあるDR対策を講じていくようにしていけばいい。