失敗というものは、人類が他の誰かと協力して何かを行うようになった時からこの世に存在している。このため、2010年にも何らかの失敗があると考えてよいだろう。本記事では、2010年に起こりそうな失敗について考察し、予測してみたい。
#1:従来型のエンタープライズコンピューティングでの失敗は、相変わらず起こり続ける
「自社でコンピューティングを行う時代はもう終わりに近付いている」と専門家がいくら声を大にして主張しようとも、まだそういった時期は到来しておらず、2010年中に来ることもないだろう。
企業は2010年もSAPやOracleといった大手ベンダーから重装備の基幹システムを購入し続けるだろう。そして、そういった実装の何パーセントかは期待外れの結果に終わることになる。
例として過去のCRMシステムにおける失敗率を以下に挙げる(関連英文記事)。実に惨憺たるものである。
- 2001年 Gartner Group調査:50%
- 2002年 Butler Group調査:70%
- 2002年 Selling Power, CSO Forum調査:69.3%
- 2005年 AMR Research調査:18%
- 2006年 AMR Research調査:31%
- 2007年 AMR Research調査:29%
- 2007年 Economist Intelligence Unit調査:56%
- 2009年 Forrester Research調査:47%
こういった状況が2010年に大きく変わるという兆しはどこにも見当たらないため、エンタープライズコンピューティングにおける失敗率は2010年中も変化することがないだろう。
#2:クラウドコンピューティングにおいて、顧客との信頼関係構築の失敗がより大きな問題となる
企業が自社で運用するシステムを開発する場合、失敗とはすなわち、予定日までに実装が完了しなかったり、予算を超過したり、システム化の範囲や仕様が計画通りにならないということを意味している。
一方、Software as a Service(SaaS)をデプロイする場合、その期間は短く、規模も小さなものとなる傾向にあるため、付随リスクが小さくなり、失敗というものの意味も従来のソフトウェア開発とは異なってくる。クラウドにおける失敗は、顧客との信頼関係を構築するうえでの問題と、サービス可用性にかかわる問題のいずれかのかたちで現れる。
顧客との信頼関係の構築に失敗するのは、クラウドベンダーがサービスの品質や価格、その他の約束事について、顧客の期待に添えなかった場合である。これに対してサービス可用性での失敗は、クラウドサービスが停止し、顧客が自社のデータにアクセスできない状態になった場合に発生する。
クラウドコンピューティングの成長が加速するということは、2010年には顧客との信頼関係の構築やサービス可用性の提供に失敗するという事例が増加するということを意味している。