マイクロソフトは2月22日、クラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Windows Azure Platform」を、日本で本格的に展開すると発表した。
2010年1月には、米国をはじめとする21カ国でサービスを開始していたが、今回の日本法人のサービス開始によって、日本語での購入や日本円での決済などが可能になり、時間や場所を選ぶことなく、PCや携帯電話、テレビなどの様々なデバイスからWindows Azure Platform上のアプリケーションやデータにアクセスできるようになる。
同社では、開発工数の削減や柔軟なシステム構築を可能にするほか、従量制の料金体系で一時的な利用が可能なため、大手企業の利用に留まらず、中堅中小企業やベンチャー企業などの利用ニーズも満たすとしている。
すでに、グーモ、ソフトバンククリエイティブ、宝印刷、富士通システムソリューションズの4社で早期導入および検証が行われているほか、50社のパートナー企業が、Microsoft Windows Azure Platformの採用や対応アプリケーションの開発について表明している。マイクロソフトでは、日本市場向けの製品サイトの開設、技術情報の提供、開発者サポートなどを積極化する。
マイクロソフト執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部本部長の大場章弘氏は、「2008年10月に開催したPDC 2008においてWindows Azureを初披露をして以来、1年以上をかけて、開発者やコミュニティ、パートナーからの技術評価のフィードバックを得て、ブラッシュアップしてきた。サーバとクラウドとが同じプロダクトとレイヤで用意され、どちらか一方だけを選ぶのではなく、組み合わせて利用することも可能。また、Visual Studioや.NETに対する投資やスキルを活用しつつクラウドへの移行が可能になる」などと、Windows Azureの特徴を訴えた。
マイクロソフトでは、日本での本格展開に合わせて、開発者向けの施策を強化する。開発者向けのサービスであるMSDN Onlineでの関連コンテンツの拡充およびホワイトペーパー公開のほか、2010年7月31日までの期間限定で、一定量のサービスを無償で利用できる導入特別プランを実施する。また、MSDN Premiumユーザーを対象に、Microsoft Windows Azure Platformの無料利用時間枠を追加する「Microsoft Windows Azure Platform MSDN Premiumプラン」を提供する。さらに、設立3年未満のベンチャー企業を対象にした支援策である「Biz Spark」との連携サービスも実施する。
そのほか、Azure専門のコンサティングチームである「ITAP for S+S」を3月から本格的に稼働させるほか、Azure専任の「クラウドテクノロジー推進部」の設置、2010年中にもボリュームライセンス体系の整備を行うなどの施策を明らかにした。
マイクロソフトの外部に設置されているユーザー会や開発コミュニティの支援、無償技術セミナーやハンズオンの開催、勉強会キットの提供を行い、すでに米国で開設しているマーケットプレイスの「PinPoint」を2010年秋までに日本語版として提供するのに加え、パートナー各社と連携した各種プロモーション展開も行うという。
「PinPointは、パートナーのクラウドサービスを紹介し、これを見た別のパートナーがそれを利用してクラウドサービスを展開できるというもの。このほかにもWindows Azure Platformを多面的に推進する考えで、幅広い企業、パートナーに対して、ITの新たな価値を提供することに力を注ぐ」(大場氏)とした。
「Ozzieの予言は間違っていなかった」
一方、米Microsoftからは、明日から東京台場のホテルグランパシフィックで開催される「Microsoft tech・days 2010」にあわせて、クラウド事業を担当するプラットフォームストラテジー担当シニアディレクターのTim O'Brien氏が来日した。
O'brien氏は「マイクロソフトは、この分野で15年近い経験があるというと多くの人が驚く。マイクロソフトでは、MSNやWindows Live、Windows Live Messengerの経験があり、今では6億人のユーザーが利用している。Windows Live Messengerでは一日に100億通のメッセージがやりとりされており、Liveでは5億ものIDが登録されている。また、Windows UpdateやMicrosoft Updateでは1カ月で1ペタバイトのコンテンツを提供している。洗練されたアップデートの仕組みを何年にも渡り運用してきた経験がある。このノウハウを多くのユーザーが利用できるのがマイクロソフトのクラウドサービスである。当社のRay Ozzieは、ユーザーは複数のデバイスと、サーバとクラウドの両方を利用する環境が訪れると予言したが、それは間違っていなかった。マイクロソフトが設立して最初の20年間はソフトの性能にハードが追いついていなかった。だが、今ではハードが高性能になり、しかも安価になったことで制限がなくなっており、すでに複数のデバイスとクラウドとを組み合わせた環境で多くのユーザーが利用している。マイクロソフトの中核プロダクトのひとつであるOfficeの最新版である『Office 2010』も、いよいよクラウド環境で利用できるようになる」としたほか、「マイクロソフトのビジネスの96%はパートナー経由によるもの。マイクロソフトが1ドルの売上げをあげると、それに対してパートナーでは7ドルのビジネスが発生する。この仕組みは、クラウドでも変わらない」などと語った。
なお、Windows Azure Platformを展開するデータセンターは、現在全世界に6カ所のほか、キュッシュのような機能を果たすCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)拠点を数カ所設置している。双方を合わせて10カ所以上になっているが、そのなかには日本の拠点はない。日本におけるデータセンターの設置については、「今後、追加的に増やすことを考えており、日本も関心がある市場のひとつ。だが、今の段階で公表できるものはない」(O'brien氏)と述べるに留めた。