サンフランシスコ発--新世代のスマートフォンに刺激され、Adobe Systemsが携帯端末への「Flash」技術の普及に向けて新たに一層の精力を傾け始めている。
Adobeは数年前から、携帯電話向けの軽量版Flash技術の開発に取り組んできたが、現在は、完全版の「Flash Player 10」をよりハイエンドなスマートフォンに対応させるべく開発中だと、同社の最高技術責任者(CTO)Kevin Lynch氏が、サンフランシスコで開催中のカンファレンス「Adobe MAX 2008」で語った。
「Flash Player 10をモバイル向けに進化させているところだ。完全版のFlash Playerをもっとハイエンドのモバイル市場に投入しようと考えている」とLynch氏は言う。
もちろん、PCと携帯端末の両方に対応するアプリケーション向けプラットフォームを供給したいと考えているのは、Adobeだけではない。Sun Microsystemsは、「Java」を携帯電話に搭載させることにある程度成功しており、数カ月ほど前からはもっと洗練されたプラットフォーム「JavaFX」の開発に取り組んでいる。また、自社の技術や開発ツールに精通しているプログラマーを大勢抱えるMicrosoftは、「Windows Mobile」に力を入れている。
「iPhone」向けFlashはまだ登場せず
Lynch氏は、NokiaのOS「Symbian」やMicrosoftのWindows Mobile、GoogleのOS「Android」を搭載した端末でFlash Player 10のデモンストレーションを行った。だが、AppleのiPhone向けFlashは、今のところまだ候補リストに記載されているだけの段階だ。
Lynch氏が多くのモバイル端末を載せたトレーからiPhoneを取り上げながら、「もう少し詰める必要がある。Appleの技術責任者の試用テストにパスしなくてはならない」と述べると、大勢の参加者の熱狂的な口笛や歓声は失望の声に変った。Lynch氏は、Adobeは現在、iPhone向けFlashの開発に取り組んでいると続けた。
もちろん、Appleの関係者は誰もLynch氏と同じ壇上には立たなかった。一方、Googleの担当責任者であるAndy Rubin氏は、初のAndroid搭載携帯電話「T-Mobile G1」を使用してLynch氏がFlashのデモを行った後に登場した。
AdobeのFlashがAndroidに対応するようになったことで、「携帯電話でのインターネット体験を向上するためのオープンプラットフォーム」の構築を目指すというGoogleの戦略が正しいことが認められた、とRubin氏は述べた。「今日、Flash 10を見て本当に心が満たされた思いだ。Androidはまさにこうした目的のために開発されたのだ」
FlashはYouTubeのストリーミングビデオに使用されており、Lynch氏は、Googleのサービスでホストされた動画をWindows Mobile搭載携帯電話で再生するデモを行った(iPhoneもYouTubeの動画を再生できるが、その前に別のストリーミング用フォーマットに変換する必要がある)。
新版「Adobe AIR」
Adobeは米国時間11月17日に、テキストレンダリングの向上、アラビア語など右から左に書く文書表記、マルチチャンネル・オーディオ、3Dエフェクトのサポートといった、Flash Player 10の機能を搭載した「Adobe AIR 1.5」を発表した。
Flash同様、AIRもモバイルの世界を志向している。Lynch氏は、LinuxベースでプロセッサにIntelの「Atom」を採用したミニPC「aigo MID」で、New York Timesのニュースリーダーアプリケーションを走らせて、AIR 1.5のデモを行った。なお、MIDとはMobile Internet Deviceを意味し、ミニPCに対してIntelが好んで使う呼称である。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ