人、モノ、金、時間は少ないほど成功できる
フェスティバル最後のセッションでは、かつて日産自動車で日産GT-Rの開発責任者を勤めた水野和敏氏が登壇し、「最小組織で世界に勝つためのチームマネージメント」と題した特別講演を行った。長時間のイベントの最後に至っても独特のホワイトボードを使った水野氏の力強い講演に、多くの来場者が釘付けとなった。
水野氏は、かつて新しい自動車のコンセプトを開発するのに、たった4人のエンジニアで取り組んだという。一方、日産自動車自身は100人のビッグプロジェクトを打ち立てた。当時社長に就任したばかりのカルロス・ゴーン氏が採用したのは、水野氏のプロジェクトだった。
「100人も人が集まると、『失敗したらどうする』『うちの部署ではできないよ』と、自分の砦を守り、過去の失敗を防止しようと働きます。未来の可能性の論議など、どこにもありません。人を集め、金をかけ、時間を与えると、人の思想はどんどん過去に戻ってしまうのです」(水野氏)
元日産自動車
日産GT-R開発責任者
水野 和敏氏
NISMOで自動車レースチームの監督に就任して連戦連勝をあげた時も、GT-Rを開発した時も同様だった。水野氏は、少人数・小予算・短期間のプロジェクトを立案し、そのすべてに成功を収めてきた。
水野氏は、「商品のベンチマークは人まねに過ぎず、2流・3流の製品を作るものにすぎない。できたものを検証するツールとするならばよい。しかし、過去を見て未来のものは作れない」と断じた。
「目的や目標を共有し、自分の役割を認識し、過去ではなく未来を見ることが、チームワークです。時間の要素を、日ごろのマネジメントやクリエイティブに導入していますか。大切な人の感性を、文字や数字で潰していませんか。人、モノ、金、時間を少なくすれば、クリエイティブで世界唯一のものを作るのは簡単なのです」(水野氏)
Networld Fes 2014 東京は、これらのセッションのほかにも、2つのパートナー・トラックが同時進行し、合計11のセッションが開かれた。また、30社を超える同社のパートナー企業の展示パビリオンも設置され、非常に大きなイベントとなった。広い会場を埋め尽くすほどの来場者が訪れ、一日中熱気に包まれていた。