災害復旧計画において重要なこととして、千歳氏は留意点をいくつか挙げた。それは、災害復旧のためにどれだけ予算を費やすか決めておくこと、ビジネスにおいてクリティカルな部分や必要なデータを特定しておくこと、適度な距離にバックアップサイトを設置すること、バックアップサイトのNCPIレベルを決めること、既存のITリソースの過剰部分を活用すること、フェイルオーバーの手順を用意しておくこと、最悪のケースに備え、コミュニケーション手段を確保することや責任者がいなくなった場合のことも考えておくことなどだ。
バックアップサイトについて千歳氏は、「米国では、州や自治体が災害復旧の指針を出しており、バックアップサイトを設置する最低限の距離の目安もある。近すぎては同じ災害の影響を受けてしまうこともあるからだ。ただ、遠すぎると今度は管理者の移動が困難になってしまうので、近からず遠からずといった適度な距離を保たなくてはならない」と話す。また、バックアップサイトのレベルを決め、どの程度予算をかけるかも、経営者が決めておくべきだと千歳氏は強調する。
また、「ITの信頼性は人なしにはありえない」と千歳氏は述べ、災害の際どうすべきかといったプロセスを明確にリスト化しておくことや、そのプロセスを社員全員に教育しておくことの重要性も指摘した。APCでも、災害の際の連絡手段を確保するため、電話番号等を記載した「Business Recovery Mail Box」という名刺大のメモを全社員が携帯するよう義務づけられている。
14日に発生した首都圏の停電では、APCのUPSがさまざまな場所で活躍したことは間違いないが、UPSは日常的に利用するものではないため、「停電して初めてバッテリーが充電不足だったことに気づいたユーザーもいる」と千歳氏は警告する。いざ火事が起こった時に、消化器の使い方がわからないというケースと同じだ。
2004年10月に発生した新潟中越地震では、本震で停電が発生した際にUPSがうまく作動したものの、そこでバッテリーを使い、再度充電することに気が回らなかったため、余震が起こって再び停電した時、充電不足だったということがあったという。
日本電池工業会の指針によると、UPSのバッテリーの寿命は、摂氏25度の環境下で約2年半から3年程度。「最近UPSメーカーがロングライフバッテリーと称して5年〜10年は大丈夫、と宣伝しているものもあるが、環境によって寿命も変わるため、そういった宣伝をそのまま受け止めると非常に危険だ。バッテリーは放電することを忘れないでほしい」と千歳氏。
さらに同氏は、災害が起こった場合の対処法について十分教育が行き届いていない危険性も挙げている。「企業のIT管理者や責任者は理解していても、業務委託や派遣社員などが災害対策について理解していないケースが多い。すべての関係者に対処法を教育することが大切だ」(千歳氏)
日本は他国に比べるとインフラの信頼性が比較的高く、安心しすぎる傾向にある。だが、「UPSバッテリーのチェックは最低1年に一度は行ってほしい」と千歳氏。サーバは定期的にメンテナンスするが、UPSの動作チェックは行われていないことが多いためだ。APCでは、サーバルームのNCPIの状況をオンラインで無料診断するサービスも同社サイト上にて提供している。
基本的な防災プロセスを用意することと、教育を徹底させることで、被害を最小限にとどめることは可能だ。9月1日の防災の日に向けて、今一度防災プロセスを見直してみてはいかがだろうか。
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