前回は、うつ病での休職について考えてみました。思い切って休職し、治療に専念すると、仕事を続けながらの治療よりは早い回復が見込めます。今回は、回復後の職場復帰について考えてみましょう。
復職後はまず「心身を慣らす」
復職直後は不安と焦りが入り混じり、複雑な心境になると思います。特に、長期休暇をとっていた場合は、体力や集中力も低下していることが考えられます。思うように仕事が進まず一層焦りを感じたり、自己嫌悪に陥ったりすることもあるでしょう。しかし、まずは電車に乗って会社に行き、1日社内で過ごせた自分をほめてあげてください。復職後は、まず「心身を慣らすこと」に重点を置くようにしてください。
復職のタイミングは、主治医と相談して決めることが重要ですが、何より大切なことは自分自身とよく相談することです。素直に、直近の1カ月前からの自分の心身の状態を確認し、1日8時間のフルタイム勤務に耐えられる状態になっているかどうか考えて判断してください。自分自身が難しいと思えば、医師の許可が出ていても少し延期する方が賢明です。
復職の際、短時間勤務などの「リハビリ出勤」が許される会社であれば、この制度を使って負担を軽減しながらの復職をお勧めします。最初は「仕事」をすることではなく、「会社に毎日継続的に行く」ことを目的にしてください。1〜3カ月ほど様子を見て問題がないようであれば、通常勤務に変更しましょう。
職場復帰で気をつけることとは?
復職後、最も怖いのが再発です。心の病というものは、良くなったり悪くなったりの波を繰り返し回復していくものです。一時的に良くなっても、また悪くなる時期がくるのです。「良くなったな〜」と思い、勝手に服薬や通院を中断してしまう人も多いようですが、これらを自己判断で止めるのはとても危険です。また、復職後は再発しやすい時期でもあります。あまり無理をせず、服薬・通院共にキチンと継続してください。
以下に、復職する際に気をつけることを5項目挙げますので、職場復帰が決まった時には目を通すようにしましょう。
1. 無理をしない
休職後は、思いのほか体力も集中力も低下しています。無理をせず、体調や気分がすぐれなければキチンとお休みしてください。
2. 復職後の体調記録をつけてみる
初めてうつ病になった人が再発する率は50%と言われています。そこで、睡眠時間、食事、気分などを簡単に記録するようにしましょう。何をしたときに落ち込むのか、どの時期に落ち込むのかなど、自分の体調や精神症状の傾向を知っておくと、いつどのように対処すればよいかがわかり、再発防止につながります。無理のない程度に記録をつけましょう。
3. 規則正しい生活を送る
睡眠薬やうつ病の改善薬に頼っても、生活リズムが不規則では一向に病気が回復しません。3食の食事をしっかり取り、軽い運動を心がけてください。夜更かしは厳禁です。
4. 服薬・通院を継続する
仕事や会社関係で人との付き合いが再開すると、自分だけ通院に時間をとられたりお酒に付き合えなかったりすることがおっくうに感じることもあると思います(服薬中はアルコールを止められることがほとんどです)。また、調子が良くなると通院や服薬の必要性が感じられなくなることもあるでしょう。その時に多くの人が勝手に服薬や通院を中断し、再発してしまうケースが多く見受けられます。心の病は症状に波があり、良くなったり悪くなったりを繰り返すのです。良くなったと自分で感じても、服薬・通院はキチンと継続することが大切です。
5. ストレスをためない
うつ病になる人は真面目な人が多いと言われています。真面目な人は、物事をすべて真正面から受け止めてしまい、ストレスをため込みやすい傾向があります。すべて真正面から受け止めると、それだけダメージも大きくなるものです。言い方は少し悪いですが、ストレスになりそうな物事からは少し逃げても良いかもしれません。真正面から受け止めるのではなく、少し斜めから受け止めてダメージを少なくするよう工夫してみましょう。