「インターネット上での情報活用環境はユーザーニーズに合わせて急速に進化し、ユーザー自身ができることの範囲が拡大している」
そう語るのは、みずほ情報総研のビジネスコンサルティング部でシニアマネジャーを務める吉川日出行氏だ。今年2月に開催された「みずほビジネスイノベーションフォーラム」で吉川氏は、最新のナレッジマネジメントの取り組み状況と情報活用の可能性について説明。リアルタイムなナレッジマネジメントを考える上で参考になる事例などが紹介された。
みずほ情報総研が実践したウェブ版「新聞の切り抜き」とは
インターネットにおける情報活用環境の流れは、情報発信者側が主体だったYahoo!などの「ディレクトリ型検索エンジン」の登場に始まり、ユーザーニーズに基づき検索するGoogleなどの「ロボット型検索エンジン」へと移行していった。その後、ユーザーニーズを予測して推奨する集合知やリコメンデーションといった技術を経て、SNSやブログなどユーザー自身によるコンテンツの作成の技術、SaaS、PaaS環境の登場によるユーザー自身によるアプリケーションの作成へと高度化が図られてきた。そして現在はTwitterが急速に伸びを見せている。
「これらの技術を上手に企業の中で活用することが、競争に勝っていくためのひとつのポイントだと考えている」という吉川氏は、みずほ情報総研が自ら実践したリアルタイムなナレッジ活用の事例を披露した。
その取り組みとは、昔ながらに行われている「新聞の切り抜きによる情報収集」のWeb 2.0化ともいえるものだ。
毎朝新聞をチェックして、業務に関係する記事を切り抜いて関係部門に配布したり、回覧したりする作業は結構面倒なものである。みずほ情報総研では、このような業務をタギング(ソーシャルブックマーク)で効率化している。具体的にはウェブ上のニュース記事を対象に、マイネット・ジャパンの社内SNS「イントラnewsing(ニューシング)」を活用して、多人数での情報収集と情報評価を行っている。
注目度の高い記事のランキング結果を公開
有益で再利用可能なニュースを見つけたら、関連するいくつかのキーワード(タグ)を付けて登録し、必要な時に呼び出せるようにしておく。それを多くの社員が行うことで簡単に再利用できる形で情報が集積され、興味分野ごとに情報がリアルタイムに共有される。
またこのシステムでは、閲覧回数によって関心の傾向が分析・集計され、毎日定時にメールマガジンが発行されると同時に、注目度の高い記事のランキング結果を公開する。日々のニュースのチェック漏れを防止し、忙しい人も自ら情報を探すことなく関心分野の情報にたどり着くことができる。
さらに、閲覧履歴で誰が記事に関心を示したかもわかるので、同じ分野の仕事を行っている社員の存在に気づくことができる。この仕組みはウェブ上のニュース以外にも社内の文書にも利用可能で、営業日報や提案書など、タグ付けによって分類や仕分けが容易になるという。