ドン・タプスコットの『grown up digital – how the net generation is changing your world』が出版された。ドン・タプスコットは、最近では『ウィキノミクス』『ウィキノミクス』が日本語に翻訳されているので知っている方も多いだろう。今回出版された『grown up digital』は、同氏がおよそ10年前のまだインターネットが”1.0”であった頃に執筆した『growing up digital』(日本語訳は『デジタルチルドレン』『デジタルチルドレン』)の後継にあたる著作となる。今回ドン・タプスコットは、およそ10,000人を対象としたリサーチを実施したという。そこまで行うことの意義は、インターネットと共に育った(”growing up”)世代が、いよいよ成人し(”grown up”)、社会へ影響力を持ち始めたことにある。
インターネットはテクノロジーか?
『grown up digital』に、アラン・ケイの言葉を引用した次の一文がある。
“technology is technology only for people who are born before it was invented” (『grown up digital』19ページ)つまり、テクノロジーとは、それが発明されるより前に生まれた人にとってのみテクノロジーである。逆に言えば、生まれたときに存在している技術というのは、もはやテクノロジーとは認識されず、その人々にとってみれば空気のような存在ということである。従って、私にとってインターネットはテクノロジーであるが、ドン・タプスコットがその著書の中で定義するネット世代(現在11才〜31才)にとって、インターネットはテクノロジーではない。
ちなみに、ドン・タプスコットは、ネットと共に育った世代のことを”Net Generation(ネット世代)”という呼び方をする。しばしばこの世代は”Generation X”に続くものとして、”Generation Y”という呼び方もされるが、ドン・タプスコットは、この新しい世代は、”X”に単に連なるものではないという考えから、あえて”Y”ではなく”Net Generation”という言葉を使っている。