筆者が卒業したManchester Business Schoolの卒業生向けの交流会で、多様性のマネジメントに関するレクチャーを聞く機会があった。誰しも「多様性は重要か?」と問われれば「重要だ」と答えるのだが、実践しているかと問われれば甚だ怪しい。
レクチャーの中で講師は聴衆に対して、自分が最も親しい人物を5人書き出せと指示を出す。皆が書き出すと、その性別や人種、年齢などの属性を質問していく。そう、その属性というのは、ほぼほぼ自分の属性と等しい人物像となる。まぁ、これはお互い属性が近いからこそ分かり合えるのだし、それ故に親しいのだと思う。
それだけに、多様性というものは意志を持って取り入れていかないと、その良さを活かすことができないことに気づく。ビジネススクール時代を振り返ってみると、コースごとにメンバーを組みかえられたグループワークは、その組成を学校側によって毎回決められており、意図的に人種を分散させるものであった。
毎回違うメンバー、しかも人種もバラバラ。そんな中でチームワークを発揮するというのは本当に面倒臭いのであるが、それを繰り返して行くとお互いの強みを発見しようという意識が働くとともに、自分の貢献できるポイントは何であるかを真剣に考えるようになる。結果として、多様性がチームとしてのパフォーマンスにつながることとなる。
一方、人間は先に見た通り、似たもの同士で集まる傾向がある。それは楽だからに他ならないが、チームの中でそれが発生すると、重複した作業やベクトルが全くあわない作業を没コミュニケーションの中で行うこととなり、多様性が全く活きない結果となる。
グローバリゼーションが進展する時代、放っておいても組織の中に多様性が生じてくることになる。が、この多様性、活かすも殺すもその多様性をいかにマネジメントできるかに掛かっていると言える。
多様性が重要だと言って、ちょっと変わった人材を採用したりすると、多様性をマネージする力がなければ、その人材は社内で浮いた存在となって飼い殺しとなる。今後、多様性が必然となる時代には、多様性のマネジメントは組織そのものの強弱に大きく影響することになるだろう。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。