最近とにかく忙しいのである。何故かと言うと、今週1週間、結婚式に出席するためにインドへ行かなくてはならないからである。場所は、デリーの北300キロほどのところにあるパンジャブ州の州都チャンディガル。
チャンディガルは、1947年のインドとパキスタンの分離後、もともとのパンジャブ地方の州都がパキスタン側に編入されてしまったために、新たに建設された人工都市である。この地図を見れば判るとおり、インドにして唯一、秩序ある都市計画に基づいて設計されている。その都市計画を担ったのは、有名な建築家であるル・コルビジェ。インドとは言いながら、ちょっと異質な都市である。
と、インドの結婚式の話を書き始めると、それだけで壮大な物語になってしまうのであるが、とにかくチャンディガルへ辿り着くまでに2日掛かり、インドの結婚式は3日間続き、そして帰ってくるのに2日間掛かるので、1週間必要なのである。だからその前後はとても忙しいのだ。
相対的に上昇する日本の存在感
私も慌しいが、世界の方がもっと慌しい。金融危機である。最近まで金融系の海外のカンファレンスに参加しても、欧米と協調とBRICSの台頭みたいな議論ばかりで、日本の存在感が極めて希薄であった。西から東へなどと言う議論においても、日本は欧米ではなく、そして何故かアジアでもない中途半端な存在だったのである。
ところが、三菱UFJによるモルガンスタンレーへの出資、野村ホールディングスによるリーマンのアジア・欧州事業買収など、突如として日本の存在感が際立ち始めている。これは、日本がサブプライム問題から受けた影響が相対的に低かったからであるが、未だ留まることを知らない市場の混乱は、その余裕すらも吹き飛ばしかねない状況にある。
全てを混ぜた後に出る新しい秩序
トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』が出版されて以来、グローバリゼーションというキーワードが世の中を駆け巡った。しかし、そこで議論されていた事象は、大きな変化ではあるが、まだ秩序立てて分析することが出来た。
しかし、今起きつつある金融危機は、これまでの秩序を一旦ご破算にして、改めて再構築するといった状況にあるように思われる。欧米からBRICSへとか、相対的に強い日本とかいうことではなく、一旦全てぐちゃぐちゃに混ぜて、その後に改めて浮かび上がる秩序が何かを見据えるような感じである。
必然としてのITへの影響
金融とは極めてITインテンシブな業界なだけに、金融ビジネスにおける混乱はIT業界にも波及する。最近ようやく日系金融機関の海外展開も復調しつつあったが、先に挙げた出資・買収により、その動きは急展開を見せる。野村ホールディングスがリーマンのインド拠点を買収したのは、日本のIT業界にとっても衝撃的だろう。
金融市場が混乱する中で、金融機関が想像を超えるスピードでグローバル化し、日本でビジネスを行っているだけなのに、俄かにグローバル競争に巻き込まれる状況が現実のものとなる。金融機関がIT領域にまでグローバル展開のシナジーを生み出すにはまだ時間が掛かるだろう。一方、それに対抗するグローバル化をIT企業が実現するにも時間が掛かるのである。アクションを起こすに早すぎるということはない。
ところで、3日間続くインドの結婚式、日毎にその意味が違うので、招待状も3通あるのだが、それと一緒に巨大なミックスナッツの袋が送られてきた。これ何なのでしょう?食べていいのか、インドへ持ってこいというのか。
グローバリゼーションは難しいですね…… 無事戻って来れたらまたお会いしましょう。