VoIPテクノロジは、従来の公衆交換電話網(PSTN)に比べて通話を低コストに--長距離通話や国際通話の場合には「格段に」低コストに--することができるため、人気を集めてきている。また、VoIPはネットワークを1つのものとして管理することからくる利便性や高度な通話機能、ユニファイドコミュニケーションを提供してくれるため、ユーザーはボイスメールや電子メール、テキストメッセージ、ファクス、外からもたらされるその他のコミュニケーションを1つのインターフェースで行えるようになる。
しかし、セキュリティが懸念事項であることに変わりはなく、このことは多くの個人や企業にとって、特に機密情報や極秘情報を電話でやり取りすることの多い場合には、VoIPを導入する障壁となっている。言うまでもなく、VoIPは、そのサービスをダウンさせる可能性があるDoS(Denial-of-Service)攻撃を含め、データネットワークが受けるのと同様の攻撃にさらされることになる。
VoIP特有の懸念事項として、ハッカーによって通話が盗聴されるという懸念も存在している。今回は、ハッカーが盗聴に用いる手口とともに、あなたのVoIPネットワークを盗聴から守るための手段を紹介したい。
通常の電話通話を盗聴できるということは誰でも知っている。屋外にも送信できる盗聴器を受話器に仕込むことで、外部にいながら会話を盗聴することができる。また、(例えば捜査当局員のように)電話会社の機器にアクセスできれば盗聴は可能だ。
さらに、無線スキャナを用いれば、コードレス電話や携帯電話からの無線信号をピックアップすることができる。また、高度な監視用機器を使えば、通信衛星やマイクロ波中継施設から送信される長距離通話を傍受することもできる。
従来の電話の盗聴は、連邦政府や州政府の法律によって明確に規定されている。VoIP通話へのアクセスに関しては法律システムがやっと対応し始めたところだが、コンピュータネットワークへの未承認アクセスを禁止する法律では、VoIPに対する侵入や攻撃、盗聴も一般的に規制の対象となる。
これは朗報だ。VoIP通話を傍受することは比較的簡単であり、ハッカーはそのためのさまざまな方法を手にしている。大半のVoIP通話は公衆インターネットを介するため、ハッカーはデータパケットに対して用いるのと同じ方法でVoIPパケットをキャプチャすることができる--そしてそういったことは世界のどこからでも行えるのだ。
しかし、音声メッセージをデジタルフォーマットに変換するテクノロジのお陰で、VoIP通話の盗聴はある意味、アナログのPSTN通話のそれよりも困難となっている。つまり、ハッカーは複数のバイナリデータの塊から音声通話を再構成する方法を持っていなければならないということになる。
実際には、残念なことにこういったことを行うのに高度なプログラミングスキルは不要だ。VoIP通話のキャプチャや再構成、再生に特化した数多くの無償ツールはウェブからダウンロードすることができる。こういったツールは、権限のないVoIP通話にアクセスする目的でハッカーによって用いられる一方、正当な目的でも用いられている。VoIP管理者は、ハッカーが用っているのと同じツール類を利用して、自らのネットワークへの侵入テストを行うことができるのだ。
盗聴ツール
最もよく知られているVoIPハッキングツールの1つに「VOMIT」(Voice Over Misconfigured Internet Telephones)がある。しかし、このツールはVoIPパケットを実際にキャプチャするわけではない。パケットをキャプチャするには、(「Ethereal/Wireshark」や「Angst」といった)「スニファ」プログラムや、「pcapsipdump」といった「ダンプ」ツールが必要となる。
VOMITは電話での会話を、一般的なコンピュータ上のメディアプレイヤーソフトで再生可能な.wavファイルへと変換する。しかし、VOMITはCiscoのSkinny VoIPプロトコルを使用しているCisco IP電話にしか利用できない。
もう1つ人気のあるVoIPハッキングユーティリティとして「VoIPong」がある。このツールはネットワーク上のVoIP通話を検知し、会話を.wavファイルとして記録する。VoIPongはVOMITと同様、Linuxを始めとするUNIXベースのOS上で動作する。しかし、VoIPongはVoIPプロトコルが何であるかにかかわらずVoIPパケットを処理するため、CiscoのSkinnyプロトコルに基づいたVoIP通信だけではなく、SIPやH.323に基づいたVoIP通信のハッキングにも使用することができる。VoIPongは、GNU General Public License(GPL)に基づく配布自由なオープンソースソフトウェアである。
また、「Oreka」を用いることでVoIPのRTPセッションを記録することができる。Orekaは、Cisco CallManagerやLucent APX8000、Avaya S8500、Siemens HiPath、Asterisk SIPチャネルを含む、数多くのVoIPプラットフォーム上で動作する。Orekaは他の多くのVoIPツールとは異なり、UNIXベースのOS上のみではなくWindows上でも動作する。
「Cain&Abel」は、パスワードをキャプチャ、解読する人気のスニファプログラムであり、VoIP通話とともに、さまざまなタイプのトラフィックもキャプチャする。このプログラムは、プロトコルとしてSIPやRTPを採用している音声通話のデータを抽出し、G711やGSM、DVI、LPCを始めとする数多くのコーデックをサポートしている。
なお、VoIPハッカーはデータネットワークのハッカーと同様に、ツールを用いるだけではなく、ソーシャルエンジニアリングテクニックも駆使するということを記憶しておいてほしい。
筆者Debra Littlejohn Shinderについて
Windows Server SecurityのMicrosoft Most Valuable Professional(MVP)として、多数の書籍や技術文書などの執筆、編集作業に力を入れながら、テクノロジーコンサルタント、トレーナーとしても活動する。警察官、警察学校のインストラクターとして活躍した経験を持つ。専門はMicrosoft製品とセキュリティ。
関連情報
-
ITコンシュマライゼーションの影響は不可避であり前向きな取り組みが重要--ガートナー調査より
コンシューマー向けに提供される技術や製品が、企業ITへプレッシャーを与え始めている。Gartner ResearchのDavid Smith氏は、「ITのコンシュマライゼーションは、今後5年間で最も重要なトレンドになると見ている」と述べ、その潮流を前向きに利用すべきだと訴える。 - VoIPへの移行は担当者の趣味なんかじゃない--論拠を示して経営層を説得する
- 買収の狙いは新たな市場構築にある--シスコのM&A戦略責任者に聞く
- 米国政府がVoIPを台無しに?料金上昇でユーザーの選択は変わるか
- 現状のボットにPtoPネットワーク構築機能は未実装--JPCERT/CC調査
- OSI参照モデルのお勉強・その2--ネットワークのイロハ(3)
「通信」 の新着情報
-
複数のデータセンターを分散させたままでBCP/DRを展開:山武
業務に必要なシステムをデータセンターで稼働させている企業は多いと思うが、災害復旧(DR)を中心とした事業継続計画(BCP)... - 日立ソフト、「SecureOnline 出前クラウドサービス」発表--導入負担を軽減
- APC、アセスメントサービス拡充--赤外線カメラで高温部分を把握
- シマンテック、中小企業に関するIT調査を発表:57%がIT費用増加と回答
- 日本IBM、企業内クラウドの展開を管理するアプライアンス「CloudBurst」を発売
- 通信 一覧へ »
「シンダー先生のシステム管理ゼミナール」 のバックナンバー
-
マイクロソフトのVoIP市場進出への準備は万全?OCSをレビュー
マイクロソフトのVoIP製品「Office Communications Server」に搭載されているソフトウェアベースのVoIP機能は、既存のPBXシステムと統合することも単独で使用することも可能である。今回はOCSの機能を取り上げる。 -
企業の事業継続計画(BCP)に盛り込んでおくべき10項目
-
料金、音質、信頼性…あなたがVoIPに求めるものは何?
-
VoIPは詐欺師にとって好都合なテクノロジなのか?抜け道をふさぐポイントを探る
-
何事も土台が重要:すべての企業におくる物理的ITセキュリティ対策10選
- シンダー先生のシステム管理ゼミナール 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
セキュリティ事件簿
情報セキュリティをおろそかにすると…… -
企業が幸せになるための3つの視点とは?
アプリケーション導入に迷われている方はこちらへ
企画特集
-
SOA、BPM、SaaS −今、企業に必要なこと
ビジネス・アプリケーションの今を網羅する特設サイト -
中小企業のセキュリティリスクとは?
導入する側・される側 得するセキュリティ製品 -
◆エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新◆
不況下でも急成長の秘訣とは?注目企業の取組みも公開! -
仮想環境を実現するソリューション特集
仮想化導入時、こんなところ気にしてますか? -
【徹底対談】運用管理ツールの賢い使い方
市場背景〜仮想化管理までアナリストが解説! -
そのストレージで仮想化に対応できますか?
メリット盛りだくさんのサンのオープンストレージ製品 -
ESBでIT投資の無駄を劇的に解消する
IBM IMPACT 2009を徹底レポート! -
ストレージメディア特設サイト開設
仮想化環境において最適なソリューションを! -
パンデミック対策特集
2009年のパンデミック発生から再考する事業継続計画 -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
インターネット上の悪意を未然に防ぐには?
ブラウザに備わったセキュリティ機能を徹底解説 -
今注目の「サジェスト検索」−デモ掲載中
システムのユーザビリティに革命を起こす技術とは -
セキュリティ&ユーザ事例【SIer Club】
最新のセキュリティ情報と提案事例が満載 -
集積度も性能も、業界最高水準のブレードPC
サーバの実装技術を、シン・クライアントへ応用 -
ロリポップ!がリニューアル
【第1回】創業者の家入一真氏が語る誕生秘話!! -
サービス・ドリヴン・データセンター
コスト効果の高いデータセンター構築には? -
■ストレージ容量50%削減保証■
ネットアップによる削減保証キャンペーン実施中 -
サーバー監視・運用のコストを削減するには
エージェントレス方式を用いたパトロールクラリスで -
エンタープライズにおけるSUSEの強み
次世代データセンターの基盤は11だ。
ZDNet Japanからのお知らせ
- ご回答にはCNET_IDご登録が必要です。
-
5. lambda関数を使って
この5分間のビデオは、並列コードをより読みやすくするために、Threaded... -
6. 既知のバグをデバッグする
この4分間のビデオは、並列プログラムエラーが疑われる既知のバグをデバ...
新着企業動向
-
シヤチハタ株式会社の電子印鑑対応ワークフローシステムに
システム連携ツール”jBOLT EXpedit...
マジックソフトウェア・ジャパン -
SaaSとERPの連携事例紹介セミナー
NTTソフトウェア -
【isle(アイル)】 共用サーバー初期費+ドメイン費用全額還元キャンペーン(最大27,300円...
GMOホスティング&セキュリティ -
ギガントmini・シリーズ
ファーストサーバ - 企業動向一覧へ»
サーバやOS、アプリケーションなどの世界ではオープンソーススタンダードが市場を牽引する現在、ストレージの世界でもオープン化の流れが始まっている。
幸い今回は弱毒性で大事には至らなかったが、まだ油断はできない。企業活動を停止すると、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまう。 
