ここ最近はOS領域のLinuxだけでなく、データベースなどを含む各種ミドルウェア、CRMなどのビジネスアプリケーションに至るさまざまなオープンソースソフトウェア(OSS)が登場し、それらが活用されつつある。とはいえ日本においては、ビジネスの場、ミッションクリティカルな領域でOSSを利用することは大きなチャレンジであり、まだまだ主流とはなっていない。
レガシー vs. OSS
特に大手国産ハードウェアベンダーは、OSSに注力することに、なお「迷い」があるという。
「ハードウェアベンダーは、歴史的にレガシーシステムをもっていて、それを中心としたビジネスを行ってきた。世間的な流れとしてオープンソースに一部は行きそうな気配は感じているが、まだまだそんなに大きなうねりまでになっていない」と語るのは、日本の代表的の大手ハードウェアベンダーである日立製作所の特別顧問であり、日本OSS推進フォーラム代表幹事を務める桑原洋氏だ。
中小規模のSIerなどは、かつては大手のレガシー戦略のもと、いわゆる下請けという立場で厳しい状況のなかビジネスをおこなってきた経緯がある。何か自分たちの力だけでブレークスルーを起こし、ビジネスとして大きな成功を果たせないか。そのひとつの選択肢として、OSSのビジネスで大手よりも先手をとろうとする企業がでてきている。
一方、大手にとっては、OSSのビジネスはまだまだ規模も小さく、当然のことながら大きな売り上げも期待できない。さらに、政府調達などでのOSSに対する官の動きも当初より緩慢で、現段階で大きな先行投資をこの分野に対しおこなうべきか迷いがあるというのだ。
日本ほどレガシーシステムが生き残り、いまなお活躍している市場は世界中にない。仮に大規模な政府システム案件が発生した場合、体力的な理由からも大手のハードウェアベンダーがこれを担当するのは妥当なことだ。その際に、OSSでやるのかレガシーでやるのかをベンダー理論だけで検討すればレガシーに傾くという。
「レガシーシステムは、研究開発もほぼ終わっている。現状、レガシーシステムを売れば売っただけ、ベンダーの利益につながる状態だ。そうなると、危険を冒してまであえてOSSは使わない。OSSの採用に対する政府の姿勢もいまひとつである。この状況では、OSSの普及を政府調達に期待することはなかなか難しい」(桑原氏)