レッドハットは2月20日、データ仮想化製品「Rad Hat JBoss Data Virtualization 6」の国内提供を開始した。サブスクリプションの年間税別価格はスタンダードサポートで16コアあたり468万円。同製品は「JBoss Data Services Platform 5.3」の後継であり、異なる種類のデータソースを仮想的に統合するためのプラットフォームになる。
製品・ソリューション事業統括本部 ミドルウェア事業部長の岡下浩明氏は、米Walmartの最高情報責任者(CIO)の言葉「私は『どのように効率的にデータを流すことができるか? どのように効率的にデータを管理することができるか? どのように効率的にデータを分析することができるか?』を常に考えている」を引用しながら、今日のデータがますます重要になってきていることを説明した。
同氏によると、データアクセスの課題として、データの抽出や転送に膨大な時間と費用が必要であり、個々のシステムが異なるデータアクセスやデータ統合方式を採用していること、これまでのデータ統合技術は、データソース技術に強く依存していること、データアクセスに関する柔軟性と変化対応力が決定的に欠如していることを挙げた。こうしたデータアクセスへの課題に対応した技術がデータ仮想化だという。
レッドハット 製品・ソリューション事業統括本部 ミドルウェア事業部長 岡下浩明氏
「当社は、データ仮想化(Data Virtualization)を『統合すべきデータを移動せずに新しい情報に変える技術』と定義している。Forresterでは、(データを抽出、変換、読み込む)ETLと統合データベース管理システム(DBMS)に代わり、優れたデータの管理と統合を実現するものとしている」(岡下氏)
データ仮想化は短周期で作成されるため、柔軟性と俊敏性が向上するという。また、物理的コピーの削減でデータ品質を改善でき、目的指向でビジネス用途に特化したデータ基盤となるため利便性が向上することもデータ仮想化のメリットとして挙げている。
JBoss Data Virtualizationは、データウェアハウス(DWH)を作らずにデータを統合するアプローチであり、短期に構築でき、変更が容易であるとした。設定中心のノンプログラミング開発で、データソース側は変更不要であるという。仮想統合データベース構築は、最短2カ月程度で構築できるとメリットを強調した。
JBoss Data Services Platformからの機能強化点は、新しい接続先を追加、データ可視化機能としてダッシュボード機能を追加したことを挙げた。
追加された接続先には、SAPアプリケーション、オープンソースソフトウェアの分散並列処理プログラミングフレームワーク「Apache Hadoop」の上で動くSQLライクと言われる「Hive」、インメモリデータグリッドソフトウェア「JBoss Data Grid」、「Googleスプレッドシート」、DWHの「Greenplum Database」、オープンデータのウェブデータプロトコルである「ODataサービス」用コネクタなどがある。すでに主要なRDBMSのほかに「Teradata」や「Netezza」といったDWH、NoSQLの「MongoDB」、Salesforce.comなどに対応している。
レッドハット JBossサービス事業部 シニア・ソリューションアーキテクト 河野恭之氏
ダッシュボード機能はデータをテーブルとグラフで表示でき、テーブルをExcel/CSV形式でダウンロードできる。JBossサービス事業部のシニア・ソリューションアーキテクト 河野恭之氏によると、グラフは円グラフや棒グラフ、折れ線グラフの3つで、グラフやテーブルのほか、各機能へのナビゲーションやデータ項目のフィルタリング機能など、グラフ以外の部品も提供する。
JBoss Data Services Platformなどを導入しているユーザー企業の事例が紹介された。
1つ目は、顧客情報を起点としたデータの横串統合を実現した、紀陽銀行の事例だ。同行では、顧客管理や営業支援、案件管理、担保保証の各システムを統合して活用するために、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールと仮想統合データベースを連携させている。DWHを作らないこと、ノンプログラミングでオリジナルのデータソースに手を入れずに導入できることで2カ月半で導入作業を終了したという。
2つ目は、ある部品メーカーが既存のバッチジョブを仮想統合データベース上で仮想的に構築した事例だ。同社は従来、データのロードから変換、集計、表示までを複数のデータベースを使いバッチで処理していたが、JBoss Data Virtualizationを使って変換や集計、抽出といった処理ごとに論理モデルを構築し、処理を迅速化したという。
3つ目は、さまざまな種類のデータを統合したあるキャリアの事例だ。同社では、既存の顧客データや価格データと、Hadoopで処理していた取引データや傾向データ、NoSQLで処理していた注文データや参照データを仮想的に統合し、新たなビジネスを生み出すためのデータ活用の基盤にしているという。
このほか、ユースケースとして、マイナンバーシステムで課題となる統合宛名システムへの提案やオープンデータ連携基盤システムへの適用などを紹介した。
今後の販売戦略として岡下氏は「現在、データ仮想化市場は大きいとは言えない。しかし非常にポテンシャルのある市場だと思っている。レッドハットは、日本でデータ仮想化という分野で先行していると自負している。業界のリーダーを目指し、積極的な事例公開、ソリューション化を実施していきたい」と語った。