ところが、この協調フィルタリングの利点が、欠点にもなってしまうことを明記しておかなくてはならない。コンテンツ情報を一切見ないため、たとえユーザーの行動履歴に類似性があり、嗜好が類似していると判断してレコメンドしても、その結果がユーザーの意図に沿わないこともあるからだ。もしくは、購入したものが友達から頼まれたものや、数年に一度しか購入しないレアなものだった場合、当面の間はその商品を基にレコメンドされてしまうこともある。さらに、ユーザー行動履歴が十分に蓄積されていない導入直後には、ほとんど精度が期待できないことも欠点だ。
ベイジアンネットワークは、コンテンツベースや協調フィルタリングとは違い、ベイズ理論を用いて統計学的な切り口からレコメンドする方式だ。ベイズ理論とは、18世紀の数学者Thomas Bayes氏が提唱した確率論で、「未来に起こる事象は、過去の多角的な発生頻度を計算することにより予想できる」という考えに基づいている。単純な確率計算とは違い、多くの事象を踏まえた上で確率を計算することにより、精度の高い予測ができるというものだ。
この理論は、GoogleやMicrosoft、IntelなどIT関連の開発はもちろん、人工知能技術や経営学、政治など、幅広い分野で用いられている。身近な例では、プロ野球のドラフトやスパムフィルターにも採用されている。
これをレコメンド技術に応用すると、多くのコンテンツ情報やユーザー行動履歴などの細部にわたる事象を計算し、ユーザーが購入する確率の高い商品がレコメンドできると考えられることから、次世代レコメンド方式として注目されている。そのため、各社が研究開発に取り組んでいるが、過去にはMicrosoftが導入して失敗した事例もある。現在は、ゼロスタートコミュニケーションの「zero-zone」でこの方式が採用されているが、まだ一般的な成功事例としては報告されていない。この方式は、しばらくは今後に期待すべき分野と言えるだろう。
レコメンド技術の4つの方式は以上だ。それぞれの方式に一長一短があり、導入するECサイトによって効果的なレコメンド方式は異なってくるため、サイトの目的に合わせた選択が必要だ。また、レコメンド方式は、掛け合わせて利用することも可能で、例えばケイビーエムジェイの「パーソナライズド・レコメンダー」では、協調フィルタリング方式とルールベース方式を掛け合わせて利用できるサービスとなっている。
次回は、現在最も採用されている「協調フィルタリング」に焦点を当て、ロジックを含めた詳細を解説しようと思う。
高島理貴(たかしま まさき)
ケイビーエムジェイ インターネットプロダクト&マーケティング事業部 プランニング&コンサルティング グループ アクセス解析チーム チームリーダー Newビジネス企画 担当。埼玉県生まれ。年間総計30億ページビュー以上のサイトを解析し、クライアントのサイトの成長をお手伝いするアクセス解析コンサルタント。
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