「レコメンド技術」が今再び注目される理由--ECサイトのレコメンド技術を考える(1)

高島理貴(ケイビーエムジェイ)

2008-05-07 08:00

 ネットマーケティング業界のトレンドキーワードには、「CGM(Consumer Generated Media)」の台頭により、「バイラルマーケティング」「行動ターゲットマーケティング」「レコメンド」「SEM(Search Engine Marketing)」そして「モバイル」などがある。これらは、従来注目されてきたキーワードであり、そのソリューション自体はすでに存在しているものだ。しかし、これらが今なお取り上げられているのは、その質や技術の向上が見込まれ、これらを用いた施策および展開に大きな期待が集まっているためと言える。

 また、野村総合研究所が2007年10月に提唱した「10のIT消費スタイル」によると、極めてニッチな商品を購入する「ロングテール消費」や、インターネット上の情報流通によって購買行動が急増減する「スパイク消費」、発売前にクチコミなどの影響で購買意欲をかきたてられる「スカイロケット消費」など、消費スタイルの多様化が進むとあり、各ECサイトでは、それぞれのユーザーに合ったマーケティング施策を考えなくてはならない。そこで、この連載ではECサイトのソリューションであり、今後のネットマーケティングの1つの軸となる「レコメンド」について解説したい。

 代表的なレコメンド技術の使用例に、「Amazon.co.jp」等のECサイトで使われている「この本を買った人は、こんな本も買っています」という表示機能がある。これは、ユーザーの行動履歴を蓄積・分析し、そのユーザーの嗜好に合わせた商品を表示する方法だ。ロジックや表示方法にはさまざまなパターンがあるが、どれもユーザーの行動履歴を元に商品が自動的に表示されるため、顕在的ニーズがあれば、ユーザーは自主的にレコメンドされた関連商品を遷移することになる。また、レコメンドはユーザーに思いもよらない「気付き」を与え、潜在的ニーズを引き出す機能も持っている。このようにレコメンドは、ユーザーがより多くの商品を閲覧し、興味を持つ仕組みを提供する技術として注目されているのだ。

レコメンド技術が注目されるまで

 レコメンド技術は、近年ネットマーケティング業界で話題になっているが、1990年代後半から2000年前半にも話題を集めたことがあった。その後レコメンド技術のトレンドはいったん下火となるが、2005年ごろから再評価が高まっている。その背景には2つの理由がある。1つは、ロングテール理論とLPO(Landing Page Optimization)によるネットマーケティングの変化で、1つはレコメンドソリューションの低価格化だ。

 2005年前後の動きを振り返ってみよう。2004年10月、米Wired Magazine編集長 Chris Anderson氏の「The Long Tail」と題する記事により、「ロングテール理論」が紹介された。2004年10月および2005年10月に開催された米国のIT系出版社O'Reilly Media主催のカンファレンスでは、同社CEOのTim O'Reilly氏がブレインストーミングとして発言した「Web 2.0」が話題となった。

 ロングテール理論では、実店舗で不良在庫となりがちな商品でもAmazon.comのようなウェブ店舗では売れるという事象を説明し、それを後押しするようにWeb 2.0カンファレンスでは「データインサイド」についても説明している。データインサイドとは、アグリゲーションサイトで求められるように、ユーザーがデータの量と質、検索精度を求めているという考え方を示すものだ。

 こうした考えは、まだウェブマーケティングが確立されていなかった当時、世間に大きな衝撃を与えた。その後多くのECサイトは、Amazon.comのようにロングテール理論とアグリゲーションサイトのようなサービスを実現するため、レコメンド技術に注目した。

ロングテール ロングテール理論

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