甲元宏明の戦略

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    レガシーアプリを抱えた企業は非常に多い

     ITRは、ユーザー企業のIT部門に対するコンサルティングに力を入れています。そのため、顧客企業のシステム環境を調査する機会が多いのですが、古いアプリケーションやサーバOSを現役として使っているユーザー企業は想像以上に多いです。現在のアプリケーションが高い成熟度をもち、ユーザー部門から新しい機能の要求がない場合、再構築にコストをかけるよりも現行システムの延命維持に努める方が経営者の理解を得やすいので、当然だとも言えます。かく言うITRも、古いアプリケーションを複数使っており、新しいシステムへの移行を計画していますが、社内にシステム専任者がいないためずっと先送りになっています。XP ModeやMED-Vはこのような企業にとって、とても強力なツールとなるでしょう。

    サーバ統合やクラウド活用でレガシー化対策業務の低減を

     とは言っても、古いアプリケーションのベンダーやSIerが、XP ModeやMED-V上での稼動を保証しサポートする可能性は非常に低いでしょう。あくまで、自己責任となると思われます。ですから、XP ModeやMED-Vも延命処置の1つに過ぎないのかも知れません。

     どれだけ優れたアーキテクチャや最新のテクノロジを用いたアプリケーションであってもいつかは陳腐化します。企業ITには、常にレガシー化のリスクが存在すると言うことです。数多くの企業内アプリケーションについて個別に陳腐化対策を考えることは非常に効率が悪く、IT部門内に付加価値の低い業務を過大に産み出すことになりかねません。サーバ/アプリケーション統合により個別対策を撤廃することも軽減策の1つですし、クラウド・コンピューティングも検討に値します。レガシー化対策業務を軽減するために何ができるのか、真剣に考えることが必要でしょう。

    甲元宏明(株式会社アイ・ティ・アール シニア・アナリスト)

     大阪大学大学院 工学研究科を修了後、三菱マテリアル株式会社に入社。新素材の研究開発に携わり、1988年米国イリノイ大学の客員研究員として渡米。帰国後、国家研究プロジェクト等の研究開発に携わりながら、研究関連の各種システムを開発。その後、情報部門に移り多くのITプロジェクトに携わる。2002年より当時国内では希有であったアジャイル型開発プロセスを活用して業務改革を主導した。また欧州企業との合弁事業においてグローバルIT責任者として、IT戦略の立案・推進を行った。現在ITRでは、IT戦略・ITアーキテクチャ・開発方法論・開発言語・クラウドコンピューティング・SaaS・オープンソース・ネットワークなどを担当。工学修士。

各賢人の意見はこれだ!
  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    よく管理されたWindows XP Mode「MED-V」

     筆者が勤めるグローバルナレッジネットワーク株式会社の標準OSは未だにWindows XPであるが、Windows VistaおよびWindows 7上での検証は進めている。業務アプリケーションではほとんど問題が起きず、これはパッケージを使っていたおかげであ...(続きを読む)

  • 後藤康成
    後藤康成 (フィードパス株式会社 取締役 CTO)

    クラウドにレガシーアプリはあるのか?

     僕らフィードパスのようなスモールベンチャーにおいても、当然のことながらクライアントコンピュータのほとんどがWindowsを利用している。クライアントコンピュータの調達方式には3年レンタルを利...(続きを読む)

  • 吉田 実央
    吉田実央(けろ-みお) (株式会社アロウズテクノロジーズ)

    Visual Studio開発の課題をXP Modeで解消できる?

     アロウズコンサルティングとアロウズテクノロジーズが提供するソリューションの中には、Visual Studio 2003やVisual Studio 2005を用いて開発する案件もあり、IDE(統合...(続きを読む)

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    ウェブ開発最大の障壁「IE6」とXP Mode

      私にとっていまでも抱えている最大のレガシーアプリケーションはInternet Explorer 6です。自分で運営しているブログ「Publickey」のデザイン変更やJavaScriptでの機能追加な...(続きを読む)

  • 野田陽介
    野田陽介 (株式会社ジャフコ)

    XP ModeとMED-VでベンチャーはR&Dに集中できる

     システム全体で見ればWindowsの旧バージョンでのみ動作するようなアプリケーションもあり、その場合はまだ当該サーバーを残した形で運用しています。また、自社でカスタマイズしている業務支援向けのデータベー...(続きを読む)

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    現場レベルではマクロプログラムがレガシー化

     職業柄、つねに最新版を追いかけていますから、基本的にレガシーアプリケーションはありません……といいたいところですが、若干量が存在します。利用する機会はめっきり減りましたが、Lotus...(続きを読む)

  • 小山安博
    小山安博 (フリーランスライター)

    XP ModeとMED-VはWindows 7への移行を促す重要なツール

     仕事柄、常に最新のOSやアプリケーションを使っている。Windowsはベータの段階からWindows 7を使っていたし、今ではMicrosoft Office 2010のベータ版を使っている。昔のアプリケーションは使わな...(続きを読む)

  • 新井悠
    新井悠 (株式会社ラック サイバーリスク総合研究所 所長)

    レガシー化するWindows 2000

     幸いなことに、筆者の所属する会社ではレガシーアプリケーションの問題を抱えていない。とはいえ、MED-Vについての報道に触れるたびに考えるのは、顕在化するWindows 2000のサポート切れの問題である。...(続きを読む)

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    レガシーアプリを抱えた企業は非常に多い

     ITRは、ユーザー企業のIT部門に対するコンサルティングに力を入れています。そのため、顧客企業のシステム環境を調査する機会が多いのですが...(続きを読む)

読者の意見をご紹介

こちらでは、読者から寄せられた意見をピックアップして紹介します。

  • 野良
    野良さん
    【業種】ソフトウェア開発・情報処理
    【職種】IT関連:エンジニア・プログラマー

    今回のテーマでは、識者の方全員の意見が些末な差はあれども大意は同じように思いました。
    弊社内のことは置いておくとして、お客様からの問い合わせでもレガシーアプリケーションの当面の延命処置として仮想化に強い関心をもたれています。(仮想化、P2Vとの絡みで。)
    クライアントアプリの場合も、仮想化とシンクライアント化の連携が強化する良いきっかけとなるのでは無いかと思っています。
    新規開発へ投資するほどの体力はないけど延命処置としての投資なら、苦しいけどなんとかっと言う企業様は時勢がら多いので数年は仮想化がますます使用される局面が多くなると思います。
    反面、レガシーから新規開発への決断をますます遅らせる要因ともなってくるとは思います。

  • okamotokozu
    okamotokozuさん
    【業種】公社/官公庁
    【職種】その他一般職

     失業中のため、我が家の個人用システムに伝考える。私は、CP/M BASICの時代からPCを使用している。システムは次々とバージョンアップを積み重ねて発展し、CONFIG.SYSで苦労した事が大昔のように思える。
     コ本的な考え方は上位互換性を確保してもらいたいということである。企業のシステムと違い個人用のシステムは単純あり、XP PAC4で略満足できる状態に達していると思う。 Windowsも95からXPまで使い続けているが、win2KでNTと統合し、XPーPAK4で安定化も満足できるまでになったを考えている。
     個人ユースに付いてはこれで十分、サポートさえ続けてもらえば文句を言わない状態である。つまりレガシーアプリはそのまま使用しているということである。
     マーケットの大きさを考えれば致し方ないと考えるが、WIー7でなく、PAK5として軽さや64ビット対応を実現してもらいたかった。折角十分に枯れた状態になろうとしていたXPであり、軽さの追求などはXPの改善という方向で行い、ユーザーは必要な機能を後で付加できるような形が望ましい。
     会社などのシステムでも大幅なソフトの変更が必要になると見積もられる。
    私の経験では、かなりのコストがかかると見なければならない。以前に私が現役で職にあったた時には、OSの変更(NT3.51からWINー2K)に伴うアプリケーション、特に開発部分の下位主に開発時に擁した経費と比較して半分い経費を費やした事がある。
     個人にとってはレガシーアイテムはパッケージソフトウェアということになる。、PC1台を自作するときに一番高価な部品はOSである事から負担感は大きい。
     前置きが長くなったが、開発部分は改造が必要となりかなりの経費をかけてレガシ−プログラムを変更した。オフィスソフトについてはそのまま使用した。
     やはりOSは上位互換性を確保した形でバージョンアップを重ねてゆくべきである。
     

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http://japan.zdnet.com/extra/windows7_panel_200912/story/0,3800102051,20407072,00.htm
【識者に聞く】あなたの会社はレガシーアプリをどのように稼動させていますか?
企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部