横山哲也の戦略

  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    よく管理されたWindows XP Mode「MED-V」

    Officeの互換性をXP Modeで乗り越える

     筆者が勤めるグローバルナレッジネットワーク株式会社の標準OSは未だにWindows XPであるが、Windows VistaおよびWindows 7上での検証は進めている。業務アプリケーションではほとんど問題が起きず、これはパッケージを使っていたおかげであろう。ただし、意外なところに問題があった――Microsoft Office 2003と2007の互換性である。

     グローバルナレッジネットワークは、プロフェッショナル向けIT教育が主な事業。そこで使用するテキストは原則として社内で制作している。ところがOffice 2003用に作成されたテンプレートが、Office 2007で正しくレイアウトされないのだ。古いテキストのメンテナンスを考えると、Office 2003と2007を混在させる必要がある。しかし、同じPCに複数のOfficeを混在させると何かと使いにくい。

     現在は1人で2台のPCを使うか、あるいはVirtual PCを使ってOffice 2003と2007を使い分けているが、そこには2つの課題がある。1つはVirtual PCの機能と性能の問題で、もう1つが仮想マシンの管理コストの問題である。

     Virtual PC上の仮想マシンは外部USBデバイスが使えないため、CDとDVD以外のリムーバブルメディアを使ったファイル交換が難しい。また、現在使用中のOSとは別のOSをインストールする手間もある。現在、混在環境を使っているのはテキスト作成者、つまりトレーニング担当のエンジニアのみであるため、OSのインストールから保守までは利用者自身で行っている。しかし、一般には仮想マシンの対応まで任せるのは難しいだろう。

     Windows 7 Professional以上で利用可能なWindows XP Modeは、仮想マシン基盤としてWindows Virtual PCを使う。これは仮想マシン上でUSBデバイスをサポートするなど、従来のVirtual PCよりも多くの機能を持つ。Windows XP Mode用のOSはVHD形式で提供されるため、OSのインストールも不要である。Windows XP Modeを使えば、現在のVirtual PCが持つ課題のいくつかは解決できることが分かった。ただし、Windows XP Modeとして提供されるOS(Windows XP)の初期構成は自分で行う必要があるため、誰でも使えるかというと少々疑問が残る。

     そこで期待されているのがMED-Vである。

    XP Mode、MED-V、App-V、VDI、適切な技術の選択を

     正直なところ、筆者はまだMED-Vの評価をしていない。しかし、仕様を見る限り「よく管理されたWidows XP Mode」という位置付けのようである。Windows XP Modeの良さを受け継ぎ、さらに全社管理ができるMED-Vは、レガシーアプリケーションを動かすための切り札となるだろう。

     ただし、MED-Vは万能ではない。ホストとなるPCには通常よりも多くの物理メモリとディスク領域が必要だし、性能面での制約もある。マイクロソフトでは、MED-Vの他、App-VやVDIなど、多くの仮想化ソリューションを持っている。適切な技術を選択する力を身につけたい。

    横山哲也(グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

     1994年頃からWindowsに関するプロフェッショナル向けトレーニングを担当、Windows NT 3.1以降の全てのバージョンを経験した。最近はWindows Server 2008 R2とHyper-Vを主に担当している。

     グローバルナレッジネットワークが運営するウェブサイト「G-Notes: Global Knowledge SNS」で、ブログ「千年Windows」を執筆中。主な著書に「Windows Server 2003完全技術解説」(日経BP)、「ひと目でわかるMicrosoft Windows Server 2003ネットワーク設定・管理術」(日経BPソフトプレス)、「実践Active Directory逆引きリファレンス」(毎日コミュニケーションズ)。

各賢人の意見はこれだ!
  • 横山哲也
    横山哲也 (グローバルナレッジネットワーク株式会社 取締役技術担当)

    よく管理されたWindows XP Mode「MED-V」

     筆者が勤めるグローバルナレッジネットワーク株式会社の標準OSは未だにWindows XPであるが、Windows VistaおよびWindows 7上での検証は進めている。業務アプリケーションではほとんど問題が起きず、これはパッケージを使っていたおかげであ...(続きを読む)

  • 後藤康成
    後藤康成 (フィードパス株式会社 取締役 CTO)

    クラウドにレガシーアプリはあるのか?

     僕らフィードパスのようなスモールベンチャーにおいても、当然のことながらクライアントコンピュータのほとんどがWindowsを利用している。クライアントコンピュータの調達方式には3年レンタルを利...(続きを読む)

  • 吉田 実央
    吉田実央(けろ-みお) (株式会社アロウズテクノロジーズ)

    Visual Studio開発の課題をXP Modeで解消できる?

     アロウズコンサルティングとアロウズテクノロジーズが提供するソリューションの中には、Visual Studio 2003やVisual Studio 2005を用いて開発する案件もあり、IDE(統合...(続きを読む)

  • 新野淳一
    新野淳一 (「Publickey」 Blogger in Chief)

    ウェブ開発最大の障壁「IE6」とXP Mode

      私にとっていまでも抱えている最大のレガシーアプリケーションはInternet Explorer 6です。自分で運営しているブログ「Publickey」のデザイン変更やJavaScriptでの機能追加な...(続きを読む)

  • 野田陽介
    野田陽介 (株式会社ジャフコ)

    XP ModeとMED-VでベンチャーはR&Dに集中できる

     システム全体で見ればWindowsの旧バージョンでのみ動作するようなアプリケーションもあり、その場合はまだ当該サーバーを残した形で運用しています。また、自社でカスタマイズしている業務支援向けのデータベー...(続きを読む)

  • 海上忍
    海上忍 (フリーランス ITジャーナリスト)

    現場レベルではマクロプログラムがレガシー化

     職業柄、つねに最新版を追いかけていますから、基本的にレガシーアプリケーションはありません……といいたいところですが、若干量が存在します。利用する機会はめっきり減りましたが、Lotus...(続きを読む)

  • 小山安博
    小山安博 (フリーランスライター)

    XP ModeとMED-VはWindows 7への移行を促す重要なツール

     仕事柄、常に最新のOSやアプリケーションを使っている。Windowsはベータの段階からWindows 7を使っていたし、今ではMicrosoft Office 2010のベータ版を使っている。昔のアプリケーションは使わな...(続きを読む)

  • 新井悠
    新井悠 (株式会社ラック サイバーリスク総合研究所 所長)

    レガシー化するWindows 2000

     幸いなことに、筆者の所属する会社ではレガシーアプリケーションの問題を抱えていない。とはいえ、MED-Vについての報道に触れるたびに考えるのは、顕在化するWindows 2000のサポート切れの問題である。...(続きを読む)

  • 甲元宏明
    甲元宏明 (株式会社アイ・ティ・アール)

    レガシーアプリを抱えた企業は非常に多い

     ITRは、ユーザー企業のIT部門に対するコンサルティングに力を入れています。そのため、顧客企業のシステム環境を調査する機会が多いのですが...(続きを読む)

読者の意見をご紹介

こちらでは、読者から寄せられた意見をピックアップして紹介します。

  • 野良
    野良さん
    【業種】ソフトウェア開発・情報処理
    【職種】IT関連:エンジニア・プログラマー

    今回のテーマでは、識者の方全員の意見が些末な差はあれども大意は同じように思いました。
    弊社内のことは置いておくとして、お客様からの問い合わせでもレガシーアプリケーションの当面の延命処置として仮想化に強い関心をもたれています。(仮想化、P2Vとの絡みで。)
    クライアントアプリの場合も、仮想化とシンクライアント化の連携が強化する良いきっかけとなるのでは無いかと思っています。
    新規開発へ投資するほどの体力はないけど延命処置としての投資なら、苦しいけどなんとかっと言う企業様は時勢がら多いので数年は仮想化がますます使用される局面が多くなると思います。
    反面、レガシーから新規開発への決断をますます遅らせる要因ともなってくるとは思います。

  • okamotokozu
    okamotokozuさん
    【業種】公社/官公庁
    【職種】その他一般職

     失業中のため、我が家の個人用システムに伝考える。私は、CP/M BASICの時代からPCを使用している。システムは次々とバージョンアップを積み重ねて発展し、CONFIG.SYSで苦労した事が大昔のように思える。
     コ本的な考え方は上位互換性を確保してもらいたいということである。企業のシステムと違い個人用のシステムは単純あり、XP PAC4で略満足できる状態に達していると思う。 Windowsも95からXPまで使い続けているが、win2KでNTと統合し、XPーPAK4で安定化も満足できるまでになったを考えている。
     個人ユースに付いてはこれで十分、サポートさえ続けてもらえば文句を言わない状態である。つまりレガシーアプリはそのまま使用しているということである。
     マーケットの大きさを考えれば致し方ないと考えるが、WIー7でなく、PAK5として軽さや64ビット対応を実現してもらいたかった。折角十分に枯れた状態になろうとしていたXPであり、軽さの追求などはXPの改善という方向で行い、ユーザーは必要な機能を後で付加できるような形が望ましい。
     会社などのシステムでも大幅なソフトの変更が必要になると見積もられる。
    私の経験では、かなりのコストがかかると見なければならない。以前に私が現役で職にあったた時には、OSの変更(NT3.51からWINー2K)に伴うアプリケーション、特に開発部分の下位主に開発時に擁した経費と比較して半分い経費を費やした事がある。
     個人にとってはレガシーアイテムはパッケージソフトウェアということになる。、PC1台を自作するときに一番高価な部品はOSである事から負担感は大きい。
     前置きが長くなったが、開発部分は改造が必要となりかなりの経費をかけてレガシ−プログラムを変更した。オフィスソフトについてはそのまま使用した。
     やはりOSは上位互換性を確保した形でバージョンアップを重ねてゆくべきである。
     

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