VistaとIE7がもたらすもの「EV-SSL編」

宮本利明

2008-02-01 15:30

Windows UpdateやMicrosoft Updateにより、「優先度の高い更新プログラム」として、Windows Internet Explorer 7(IE7)日本語版の自動更新による配布が2008年2月13日に予定されている。しかし、いまだIE7に未対応のサイトや、IE7だと表示が崩れるサイトが日本では少なくないという一面もある。そういった環境の中、2月13日の自動更新による配布を機に日本でも注目されるであろうEV-SSL(Extended Validation Secure Socket Layer)について紹介したいと思う。IE7はEV-SSL対応ブラウザの一つだ。

●SSLからEV-SSLへ

 SSLはSecure Socket Layerの略で1994年にNetscape Communication社が発表した、インターネット上で最も広く使われている暗号化および認証のためのプロトコルだ。近年ではウェブ以外にも、POP/SMTP Over SSL、SSL-VPNなど利用範囲を拡大している。

 SSLの本来の機能は、通信経路の暗号化と身元確認である。暗号化は第三者によって盗聴・改ざんされていないかを、身元確認では通信をしているのが正しい相手かを、知るものである。

 現在SSLの信頼性を担保するにはルート認証局が必須であり、ルート認証局はウェブトラストに定められた運営基準によってSSL証明書を発行している。

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 ウェブトラスト(WebTrust)とは、米国公認会計協会(AICPA)と、カナダ勅許会計士協会(CICA)によって共同開発された制度で、インターネット事業者が国際的な電子商取引保証規準に基づき、電子商取引を行なっているのかを審査するものだ。

 審査に合格したインターネット事業者には審査報告書とウェブトラストシールを付与、消費者はウェブトラストシールをクリックすることで審査報告書を確認でき、安心してその事業者と取引を行なうことができる。

 ウェブトラスト規準を満たしたルート認証局は、代表的なウェブブラウザに「信頼されたルート証明機関」として登録される。

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 SSLのプロトコルは標準化から10年以上が経過し、市場ニーズも多様に変化してきた。これに対応し、電子認証局各社が様々な審査発行基準によって、証明書を発行するようになった結果、組織認証をせずに発行されたSSL証明書を悪用したフィッシングサイトが現れ「鍵アイコン」の信頼性が一部で失墜することになった。

 そこで、電子認証局に幅広い裁量が認められていた証明書発行審査プロセスを見直し、より厳格な認証プロセスの要件定義と標準化を行うことを目的として世界の主要な電子認証局(CA)とブラウザベンダーにより、米国で非営利団体CA/Browser Forum(CABF)が設立される。

 CABFは、EV(Extended Validation)ガイドラインとする、SSL証明書の審査発行基準の標準化と、SSLをブラウザでユーザーに見せる表示基準を制定した。これによりEV-SSLが誕生する。現在ではEV-SSL対応ブラウザとして、Windows Internet Explorer 7 (IE7)とMozilla Firefox3が登場している。

●Windows Vista+IE7でEV-SSLは一目でわかる

 Windows VistaとIE7においてEV-SSL証明書に保護されたサイトにアクセスすると、アドレスバーが緑色に変わり、そのサイトが信頼できるサイトであることが視覚的に確認できる。

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 また、アドレスバーの横に、証明書に記載されている組織名や、証明書を発行した認証局名が表示されるようになっている。アドレスバーが緑色になっている EV-SSL証明書は、なりすましやフィッシング詐欺を“阻止する”手段として、インターネットユーザーから期待されている。疑わしい証明書、あるいはフィッシングサイトと判断されると、アドレスバーは赤色で表示され、警告画面が表示される。

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●JCAFの設立

 CABFのEVガイドラインを日本語に翻訳し、国内での標準化を推進するべく、日本国内の主要な電子認証局およびブラウザベンダーが発起人となって、有限責任中間法人日本電子認証協議会(英文名称:Japan Certification Authority Forum [略称:JCAF])は、2007年1月30日に設立された。JCAFの加藤理事(サイバートラスト株式会社 取締役COO兼CFO)は「EV-SSLの普及啓蒙の一役になることをIE7の自動更新による配布に期待している」という。

 世界標準のEV-SSLは、フィッシングサイトを排除し、安心・安全なインターネットをIE7が日本国内にもたらすことができるのか、自動更新による配布から半年後のエンタープライズコンピューティング市場の動向を見た時に答えがあるはずだ。

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