1993年、AT&Tは「You Will」という広告キャンペーンでテクノロジの未来についてユニークな予測を行った。ビデオ通話やGPS機能を使ったカーナビなど、あらゆるものを予言している。
そして、そうした予測のほとんどは実現している。
1993年のYou Will広告では、オンデマンドのビデオストリーミングサービスが予想されていた。
電子書籍やETC(電子料金収受)システムなどのテクノロジの多くは、今日では当たり前になっている。しかし、これらの予測はインターネットがまだ始まったばかりの時期に考えられたもので、大部分の人々はアナログの世界に生きていたことを忘れてはならない。これらのイノベーションは、AT&Tが顧客に提供するサービスとして予想したものだが、思い通りにはならなかった。その多くは、Apple、Google、Amazonといったテクノロジ企業によって実現したからだ。しかしながら、この広告は、われわれの生活が今どのようなものなのか、四半世紀も前であるにも関わらず恐ろしく正確な見通しを立てている。
You Will広告の25周年を記念して、AT&Tは同社の従業員と外部の学者たちに、新たな予測を示すように求めた。その中から注目に値するものを紹介する。
AT&Tの現在の経営陣と外部の学者たちが集まり、新たな見通しをまとめた。
介護ロボット
ロボットは、掃除機やペットといったさまざまな形で生活に入り込んでいる。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者であるAndrew McAfee氏は、認知症の高齢者や自閉症の子供をサポートする、より高度なロボットを思い描いている。
「ロボットの素晴らしい点を1つ挙げるとすれば、人間にいら立つことがないということだ」とMcAfee氏は話す。
人工知能(AI)とデジタルセルフ
AIを用いれば、100年後の世界に自分の痕跡を残すことができる。AT&Tで運用自動化およびプログラム管理担当バイスプレジデントを務めるAlicia Abella氏は、亡くなった父親が野球の投手だったことから、その“AIプリント”を作成できれば、息子に野球のやり方を教えられるだろうと想像する。
コンサルティング企業であるNot Terminatorの共同創業者でストラテジスト、技術専門家のMichaela Rose氏は、全ての子供がAIアシスタントを持つようになり、宿題の手伝いやそれぞれにあった学習プランの作成が可能になると考える。
健康管理
フューチャリストでテクノロジ哲学者のGrey Scott氏は、衣類型のウェアラブル端末は、心拍の停止を検出すると、自動でドローンを呼んで除細動器を運ばせるといったことが可能になると予測する。Abella氏も同様に、自宅や衣服に備わった広大なセンサネットワークが、利用者の健康状態を絶えず監視するようになるだろうと見通す。
スマートホーム
AT&T LabsのプレジデントでAT&Tの最高技術責任者(CTO)を務めるAndre Fuetsch氏は、自宅から外出すると状態を変化させるスマートホームの可能性について語った。映画制作デザイナーのHannah Beachler氏はさらに一歩進んで、好みによって絵画が変化したり、室温が自動で調整されたりする状況を思い描く。
音声アシスタント「Alexa」を搭載した「Echo Dot」のようなスピーカによって自宅がスマート化されつつある。
ショッピング
Abella氏の思い通りになるなら、食料品の買い出しといった日常もなくなるだろう。同氏の説明では、お店で自分が買うトマトを選んでいるように見えても、それは自分のアバター(分身)を使ってのことで、実際は自宅で座りながら行っているのだという。
Beachler氏も同様に、自分と同じ体型のアバターを使って洋服の試着をし、印象を確かめたいと思っている。そのまま注文すれば、どこにでも配達されるだろう。
自動車
自律運転は、この産業にとって真のゲームチェンジャーになる可能性がある。AT&Tでリテール&ケア担当シニアエグゼクティブバイスプレジデントを務めるRsesh Patel氏は、「25年後に車を所有する人はいなくなるだろう」と話す。
AT&Tは自動車同士が通信する技術(それは同社も擁するセルラーネットワークに他ならない)について語っている。
「Waymo」の自動運転車は既にテスト段階に入っている。
「酔っ払い運転による死亡事故を避けられる。もはやそのようなことは起こり得ない」(Scott氏)
新しい映画体験
AT&T Entertainment Groupの製品管理担当バイスプレジデントを務めるWayne Purboo氏は、帽子やメガネ、リストバンドなどのあらゆる場所に仕込まれたカメラで撮影した映画を構想する。
「自分の座っている席が気に入らなければ、立ち上がってよそに行く。映画の中でそれができるようになると想像してほしい」(Purboo氏)
こうした推測の幾つかは、まだ実現しそうにない。しかし、1993年当時の多くの予測を思い出してほしい。われわれが日常的に使用しているテクノロジの大部分、例えば、コンピュータを使ったビデオ会議やオンデマンドでのビデオストリーミングは、当時としてはかなり型破りなものだったろう。
AT&T幹部のWayne Purboo氏(左)が、CTOのAndre Fuetsch氏と映画制作デザイナーのHannah Beachler氏に映画の未来を語っている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。