本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ジェンパクトの田中淳一 代表取締役社長と、ファイア・アイの西村隆行 代表取締役社長の発言を紹介する。
「BPOだけでなく企業のデジタル変革を支援するパートナーになりたい」
(ジェンパクト 田中淳一 代表取締役社長)
ジェンパクトの田中淳一 代表取締役社長
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手掛ける米Genpactの日本法人ジェンパクトが先頃、今後の事業戦略について記者説明会を開いた。田中氏の冒頭の発言はその会見で、日本企業へのデジタルトランスフォーメーション(以下、デジタル変革)支援事業を本格的に開始することを明らかにしたものである。
Genpactは日本であまり知られていないが、米General Erectoric(GE)のシェアードサービス部門が独立した企業で、世界70カ国で700社を超える顧客企業にサービスを提供し、売上高約3000億円、従業員数8万7000人超の規模を持つBPO大手である。ここ数年は、デジタル変革支援事業にも注力している。
デジタル変革を支援するため、独自の人工知能(AI)やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の技術をはじめ、業種・業務特化型サービスなどを備えた「Genpact Cora」と呼ぶテクノロジプラットフォームも用意している。
田中氏とともに会見に臨んだGenpactのSanjay Srivastava 最高デジタル責任者(CDO)は、「デジタル変革は業務プロセスとデジタルを組み合わせたところに、ビジネスの最大価値を生むポイントがある。当社は今、そこに強みを発揮しつつある」と強調した。
田中氏も「当社は、日本ではBPOの会社というメージが強いが、グローバルではBPOだけでなくデジタル変革を支援するパートナーとして、お客さまに認められている。その強みを日本でも生かして、日本企業の効率化や高付加価値化を加速するパートナーとしてお役に立ちたい」と力を込めた。
さらに同氏は、「本当の効果を創出できるデジタル化とは、単なるRPA導入でもAIの導入でもない。現場主義という御旗のもと、現場任せになりがちなデジタル改善活動だけでは、効果は限定的だ。全体最適を見据え、部門や業務を越えたエンド・ツー・エンドの最適化視点で検討すべきだ」とも語った。
では、ジェンパクトは日本でどのような事業を展開していくのか。同氏によると、これまではノンコア業務を中心にBPOサービスを提供してきたが、今後は図のように、ノンコア業務にインテリジェントオペレーションを、さらにコア業務に対してデジタル変革の支援を行っていくとし、「この両輪を推進していくのが当社の役目だ」と説明した。
図:ジェンパクトのサービス(出典:ジェンパクトの資料)
日本法人の体制強化としては、KPMGコンサルティングなどでデジタル変革支援を手掛けてきた田中氏が2018年10月に社長に就任。今後は同分野のコンサルタントを2019年内に30人、2021年までに200人規模に拡充していく計画だ。
BPO大手がデジタル変革の支援事業に乗り出し、強みにしているとは興味深い動きである。IT業界の構造変化を物語る1つの局面といえそうだ。
会見ではGenpactのSanjay Srivastava CDOも説明に立った