サイバー攻撃やハッキング事件の頻度が増し、その範囲も広がっていくなか、組織や政府機関は恐怖に基づくサイバーセキュリティ戦略に戻らないようにする必要がある。このようなアプローチはユーザーにメリットをもたらさないばかりか、攻撃を防ぐうえで何の役にも立たない。
英政府通信本部(GCHQ)のサイバーセキュリティ部門である英国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)の最高経営責任者(CEO)Ciaran Martin氏は、同センターが開設した2016年以降のサイバーセキュリティガイダンスの変遷を振り返った。同氏によると、当初のアプローチは、人々をおびえさせることでオンライン上のセキュリティを確保するようなものだったという。しかし、今では脅威をより深く理解するよう促すというものになっているという。
Martin氏は、ロンドンで開催された「Infosecurity Europe 2019」の基調講演において、サイバーセキュリティに対する政府のアプローチと、Pixar Animation Studiosの映画「モンスターズ・インク」のアプローチを比較しつつ、「われわれGCHQと政府は4年前の段階でもまだ、不本意ながら『モンスターズ・インク』に登場するナンバーワンの怖がらせ屋のような役割を演じていた。われわれは依然として、脅威について、そしてそれは非常に恐ろしいものだということについて、人々を説得せざるを得なかった」と述べた。
Martin氏によると、これにより組織に不安がもたらされ、サイバー攻撃の恐れを抱いた組織の人々が、問題をしっかりと把握できないという懸念から、サイバーセキュリティのアウトソーシングに向かっていったものの、このようなアプローチは必ずしも適切ではなかったという。
同氏は「それは答えではなかった。答えは、人々が問題を自らのものにするというところにあった」と述べた。
そして同氏は、「その結果、ここ数年のアプローチはサイバーセキュリティに対する恐れに基づくものではなく、人々に問題を理解してもらうようにするという実践的なものになってきている」と付け加えた。